活動について
各地域での活動
活動レポート
- 地元への深い愛情が人々を「絆」で結ぶ
- 郷土料理の商品化で食文化をつなぎ地元に誇りを取り戻す
- 人々の想いが新たなブランドを創り出す
- 被災した工場が被災地を応援するという取り組み
- 鯉ブランド復興にオール郡山で取り組む
- 宮城県の食材のファンを作る試み
石巻うまいもの発信協議会 試食会レポート (1/1)
2014年10月15日、東京都中野区にあるキリングループ本社で、「石巻うまいもの発信協議会」(以下、協議会)の試食会が行われた。
「復興応援 キリン絆プロジェクト」の支援を受ける協議会では、「ビールに合うおつまみ」をコンセプトに、水産物だけでなく鶏肉、お米、味噌など、地元産の様々な食材を使って新商品開発に取り組んでいる(事業の詳細に関するレポートはこちら:http://kizuna-nipponfoundation.info/2014/09/post-38.html)。試食会では、「めんたい鶏ハラミ」や「さばハンバーグ」など、すでに開発された15品目の品々が並んだ。
自慢の商品を前に笑顔を見せる協議会のメンバー
それぞれの商品がきれいに盛り付けされていた
キリングループ本社では毎週水曜日、「コミドリ」という企画を実施している。会社の定時である午後5時30分から7時まで、社内の飲食スペースにおいて、お酒やおつまみを用意し、いろいろなテーマ設定を行いながら、社員の皆さんにコミュニケーションを深めてもらおうという試みだ。同じ部署の仲の良い社員同士だけでなく、上司と部下、また、他部署の社員とも交流を深める役割も担っている。今回は「コミドリ」の企画を活用する形で、協議会の試食会が実施された。
試食会の会場には、100人を超えるキリングループの社員が集まり、関心の高さをうかがわせた。試食会の前には商品の販売会も行われたが、ここにも200人以上の社員が訪れ、商品は終了時間を待たずに完売となった。
試食会場は100人を超える参加者で大盛況だった
冒頭、キリン株式会社CSV推進部キリン絆プロジェクトの野田哲也・リーダーより、世界中に安心で安全な商品を届けるために、石巻の11社が協力して事業に取り組んでいることなど、協議会の紹介が行われた。
協議会の紹介を行う野田・絆プロジェクトリーダー
続いて、「石巻うまいもの発信協議会」の会長を務める千葉雅俊さんから挨拶が行われた。
「このたびは試食会の機会をくださり、誠に有難うございます。石巻では震災前の売り上げを回復している事業者はわずか19パーセント。8割以上がまだ回復できていない、厳しい状況にあります。そうした厳しい状況を打開するべく、私たちは商品開発を続けています。今日の試食会では皆さんから忌憚のない意見を頂戴して、さらなる商品の改良に活かしたいと思います」
商品改良への意気込みを語る千葉会長
また、副会長の平塚隆一郎さんから、協議会の事業についてプレゼンが行われた。協議会では「石巻から世界に安心・安全な商品を届ける」ことを基本コンセプトに、新鮮な水産物に農畜産物も加えて商品開発を進めている。特に地元の農畜産物も活用できることは、他の地域との大きな差別化になると考えているようだ。また、新たな味を開発するために、業種を超えて石巻の様々な事業者が「連携」することも大切にしている。ただし、仲良しグループで終わるのではなく、互いに厳しいことも言い合い、切磋琢磨しながら商品開発に臨んでいるという。
事業内容をプレゼンする平塚副会長
その後、協議会の事務局長を務める阿部壮達さんから、商品内容の説明も行われた。「鯨の舌」(さえずり)という貴重な部位を使ったり、ブリで生ハムの燻製を作ったり、タラコと味噌をコラボレーションさせたりと、どの商品も特徴的なものばかりだった。
各商品の説明を行う阿部事務局長
商品説明が終了すると、いよいよ試食の時間となった。キリングループの社員の皆さんは、試食用の料理が置かれたテーブルに順番に並ぶと、協議会のメンバーから料理を取り分けてもらった。そして自分のテーブルに戻ると、キリンのビールやチューハイを飲みながら、協議会の料理を試食。一通り試食が終わると、アンケートの質問に次々と答えていった。
協議会のメンバーに料理を取り分けてもらう社員の皆さん
この時間は互いの交流の時間にもなった
なごやかな雰囲気の中でも、試食とアンケートへの記入は真剣に行われていた
この日の試食会には、キリンホールディングス株式会社の三宅占二・代表取締役社長も、忙しい合間を縫って参加。東北でのボランティア経験もある三宅社長は、試食会に格別な思いを寄せていた。
「宮城県の南三陸町で、漁協の皆さんの仕事をお手伝いさせて頂きました。家族や親せきを亡くされている方もいらしたのに、明るく接してくださったことをよく覚えています。協議会のメンバーの中にも、同じように辛い思いをしている方がいるはずです。それでも皆さんで力を合わせて、水産業だけでなく石巻という地域全体を盛り上げようとしていることに、とても感激しています。私たちもできる限りの応援をしながら、一緒に頑張っていきたいですね」
三宅社長(写真右)は東北に格別な思いを寄せている
また、試食会に参加している社員の皆さんにも話を聞いてみた。「コミドリ」をよく利用しているという女性社員の方は、協議会の試食会があると聞き、必ず参加すると決めていたそうだ。
「社内に貼られていたポスターの商品写真を見て、ぜひ食べてみたいと参加しました。商品は加工処理されているけど素朴な味で、素材の良さをうまく活かしているなと感じました。とは言え、改良点もあるので、アンケートには正直に書いていくつもりです。自分自身も被災地でホタテ養殖のボランティアを経験しましたが、勤めている会社がこうした復興支援のお手伝いを続けていることは、やっぱり嬉しいですね」
参加者の中には女性グループも数多く見られた
アンケートにはどんな評価が書かれているのだろうか
そして試食会の最後には、キリン株式会社CSV推進部の林田昌也・部長からも挨拶が行われた。
「協議会の皆さん、今日はわざわざ石巻から来てくださり有難うございます。また、販売会や試食会に参加してくださった、社員の皆さんにも感謝申し上げます。震災から3年半が過ぎましたが、協議会の皆さんは私たちが想像できないような苦労を重ねて、今日の日を迎えたことと思います。商品開発は決して簡単なことではないですが、お客様に商品を買って頂き、食べて頂くことが楽しいんだということが、皆さんの笑顔を見ていてよくわかりました。まだまだ大変な道のりだと思いますが、皆さんの商品が一人でも多くのお客様に届くよう願っています」
この日の試食会で提供された15品の中には、すでに商品として販売されているものもあれば、まだ開発途中のものもある。協議会では最終的に、20品目を商品化することを目指しているという。今後は通販サイトをオープンして全国どこからでも商品を買えるようにしたり、イスラム圏の人たちが食べられるようハラールフード(イスラム教の律法にのっとった、豚肉やアルコールを使用していない食品)の対応もしていく予定だ。特にハラールフードは実現すれば、地域にイスラム圏の人々を呼び込めるなど、食産業だけでなく観光業にも好影響を与える可能性がある。
試食会のアンケートの中には、厳しい意見も少なくなかったはずだ。そうした貴重な意見を活かして、協議会の皆さんがさらに商品を改良し、石巻の復興を大きく盛り上げてくれることを期待したい。
試食会で頂いた貴重な意見を活かして、さらなる商品開発を頑張ります!
取材協力/有限会社パワーボール、写真撮影/和田剛