活動について
各地域での活動
活動レポート
- 地元への深い愛情が人々を「絆」で結ぶ
- 郷土料理の商品化で食文化をつなぎ地元に誇りを取り戻す
- 人々の想いが新たなブランドを創り出す
- 被災した工場が被災地を応援するという取り組み
- 鯉ブランド復興にオール郡山で取り組む
- 宮城県の食材のファンを作る試み
気仙沼水産食品事業協同組合 試食会レポート (1/1)
2015年1月21日、東京都中野区にあるキリングループ本社で、「気仙沼水産食品事業協同組合」(以下、協同組合)の試食会が行われた。
協同組合は気仙沼市で事業を行う水産加工会社4社(八葉水産・村田漁業・モリヤ・アグリアスフレッシュ)で構成されている。気仙沼の地域と水産業を復興させるために、新しい商品の開発を行おうと、立ち上げられた組織だ。
商品開発のコンセプトは、「リアスフードを食卓に届ける」こと。気仙沼では、山からの栄養分が川によって海に運ばれ、リアス式海岸の深い入り江に蓄えられ、さらに海の栄養分とあいまって豊かな海を育んでいる。こうした環境でとれる四季折々の「海の幸・山の幸」のリアスフードを、商品として世に送り出すというものだ。(プロジェクト内容の詳細に関するレポートはこちら:http://kizuna-nipponfoundation.info/2014/06/post-31.html)。
試食会では、協同組合が商品開発を進めている「気仙沼フカフカ団子」「塩辛チーズのカナッペ」「子持ちめかぶ甘だれ ひじき・のり 混ぜご飯」「海藻オニオンディップ」「メカジキのスモーク」の5品目が登場。事前に行われた販売会では、終了時間の1時間以上も前に完売となる盛況ぶりだった。
試食会で提供された「塩辛チーズのカナッペ」(左)と「子持ちめかぶ甘だれ ひじき・のり 混ぜご飯」(中)。また先着で、「海藻オニオンディップ」が参加者にプレゼントされた
冒頭、キリン株式会社CSV推進部キリン絆プロジェクトの野田哲也・リーダーより、「復興から未来へ進むための商品開発を続けていること」「サメ肉など新しい商品作りに取り組んでいること」「試食会のアンケートで忌憚のない意見をもらい、さらなる商品開発に活かそうとしていること」など、協同組合の紹介が行われた。
協同組合の紹介を行う野田・絆プロジェクトリーダー
続いて、「気仙沼水産食品事業協同組合」の代表理事を務める清水敏也さんから挨拶が行われた。
「本日は皆さんに紹介できる商品ができたので、協同組合のメンバーと一緒にやって来ました。試食会に臨むメンバーの晴れ晴れとした顔を見て、一緒に頑張って来て本当によかったと感じています。まずは試食会を始める前に、私たちがリアスフードにこだわる理由などについて、皆さんにプロジェクト内容の紹介をさせて頂きます」
笑顔を見せながら挨拶を行う清水さん
清水さんは挨拶を終えると、プロジェクト内容の紹介を行った。
協同組合がこだわりを持つリアスフードとは、海と山に囲まれた風土がつくる、豊かな「海の幸」と「山の幸」のこと。そして、その先にある人々とのつながりを含めた、食の正しい在り方を意味する。海産物を中心とする「シーフード」の枠を超え、塩や米、その他の農産物なども活用しながら、商品開発を進めている。
また、商品開発の手法もバラエティに富んでいる。協同組合の4社が独自に開発するのに加え、都内の有名シェフと協働して新しいレシピを開発。気仙沼の食材をパスタやピザ、コンフィに活用するなど、今まで手掛けて来なかった洋風レシピへのアレンジにも挑戦している。すでに開発された商品が、都内のホテルのビュッフェメニューとして採用されたという実績もある。また、気仙沼や東京都内の高校生が、リアスフードを使って新しい料理を提案する「リアスフードグランプリ」も開催。2014年8月に行われた最終審査会でグランプリを受賞した「サメ肉団子」は、商品開発用にアレンジされ、「気仙沼フカフカ団子」と名を変えて試食会のメニューに加えられている。(「リアスフードグランプリ」の記事はこちら:http://kizuna-nipponfoundation.info/2014/09/post-40.html)。
プロジェクト内容の紹介はスライドを使って行われた
プロジェクト内容の紹介が終了すると、いよいよ試食の時間となった。今回は5品目の料理を1枚のお皿に盛り付け、ランチプレートのような形で試食することになっている。キリングループの社員の皆さんは、順番に並んで料理を取り分けてもらった。
試食会には100名を超える社員の皆さんが参加
5品目の料理はランチプレートのような形に、きれいに盛り付けられていた
参加者に料理を取り分ける協同組合のメンバー
試食会場には協同組合が実施するプロジェクトのロゴマークも飾られていた
また、協同組合のメンバーから、5品目の料理に対する説明も行われた。「気仙沼フカフカ団子」は高校生が考えたサメ肉を使ったメニューであること、「塩辛チーズのカナッペ」は洋風にするためにチーズをふんだんに使っていること、「子持ちめかぶ甘だれ ひじき・のり 混ぜご飯」は海藻をご飯と混ぜることでもち米のような食感になることなど、各料理のセールスポイントが伝えられた。
キリングループの社員の皆さんは試食用の料理を受け取ると、自分のテーブルに戻り、キリンのビールやチューハイを飲みながら試食を開始。一品ずつ試食しながら、アンケートの質問に次々と答えていった。
試食をしながらアンケートを書き込む社員の皆さん
おいしい料理に思わず笑顔がこぼれる
試食会の途中、男女4名でテーブルを囲むグループに話を聞いてみた。それぞれが所属する部署は違うが、同じプロジェクトに取り組むこともある仕事仲間だという。
「気仙沼は映像では見たことがありますが、行ったことはありませんでした。今回の試食会に参加したことで、気仙沼がより身近になったと思います。料理の中では、『気仙沼フカフカ団子』が印象的でした。サメ肉を食べること自体が珍しいですが、こんなにおいしいとは思いませんでした。新しい発見がたくさんある試食会でしたね」
参加者からの評価も高かった、サメ肉を使った「気仙沼フカフカ団子」は、トマトクリームソースで味付けされている
試食会で用意された料理は200人分。そのほとんどが完食されていた。参加者は100名を超える人数だったので、多くの人がおかわりをしたことになる。それほど、試食会で出された料理は、参加者の食欲を刺激するおいしさだった。
協同組合では試食会でのアンケート結果を踏まえつつ、これからも新たな商品開発を続けていく。また、商品開発にとどまらず、自分で作った塩でおにぎりを作る「おにぎり大作戦」など食育につながる活動や、東京にも活動拠点を設けて人材を発掘することで新しい働き方を提案する活動も行っている。
「何もないところから何かを作り出す。それが私たちのプロジェクト」
そう清水さんは語る。無から有を生み出すプロジェクトが、気仙沼の復興を加速させるための中核となれるよう、期待を込めて見守っていきたい。
気仙沼の復興のために、みんなで力を合わせて頑張ります!
取材協力/有限会社パワーボール、写真撮影/和田剛