活動について
各地域での活動
活動レポート
- 地元への深い愛情が人々を「絆」で結ぶ
- 郷土料理の商品化で食文化をつなぎ地元に誇りを取り戻す
- 人々の想いが新たなブランドを創り出す
- 被災した工場が被災地を応援するという取り組み
- 鯉ブランド復興にオール郡山で取り組む
- 宮城県の食材のファンを作る試み
「北三陸ファクトリー」開所式レポート (3/3)
復興の集大成となる事業
「北三陸ファクトリー」の概要説明が終わると、工場見学の時間になった。参加者は3つのグループに分かれて、工場の中を見て回った。
最初に案内されたのは、北紫ウニの加工を行う部屋だ。
ウニの加工場では徹底した衛生・品質管理が行われている
北紫ウニは世界で唯一の「牧場育ち」の天然ウニと言われている。1年目に栽培センターで稚ウニを生産し、2年目から3年目にかけて外洋にウニを放ち、天然の漁場で育てる。その後、「ウニ牧場」と呼ばれる増殖溝に移植され、栄養たっぷりの良質な天然昆布を食べながらウニは育っていく。
約4年をかけて成長した北紫ウニは、「北三陸ファクトリー」で働く地元のお母さんたちの手によって、殻がむかれ、海水が抜かれ、ワタが取られていく。加工やパッキングの際は、添加物を使わず殺菌海水を使用するので、ウニ本来の風味を味わえるのが特徴だ。
「北三陸ファクトリー」で働く地元のお母さんたち(写真左)。
ウニの殻むきやワタ取りはすべて手作業で行われる
また、従来より低い5度以下の塩水で殺菌処理するため鮮度が長続きし、品質保持できる期間も長くなった。そのお陰で東京までしか出荷できなかった無添加の北紫ウニを、関西や海外まで流通させることも可能になった。
お母さんたちによる作業は毎日3時間ほど行われ、1日に300~400個のウニが出荷される
他にも、抗菌板で覆われた無菌室があるなど、「北三陸ファクトリー」では徹底した衛生管理のもとで加工を行い、鮮度にこだわったおいしいウニを出荷している。
そして開所式の最後には試食会も行われた。
テーブルに並んだのは、殻むきされたばかりのウニのほか、天然のワカメやホヤなど。また、ウニのお吸い物にそーめんを入れた「イチゴ煮そーめん」も登場した。湯通しされたウニの色やつぶつぶとした感じが、イチゴの表面に似ているため、このような名前になったという。
試食会のテーブルには豪華な海の幸が並んだ
参加者からは、「ウニが新鮮で甘い」「ホヤに全然くさみがない」「ワカメの歯ごたえがやみつきになりそう」など、新鮮かつ天然の海産物を高く評価する声が相次いだ。
試食会の途中、洋野町の日當(ひなた)博治・副町長にお話を聞いてみた。町としても「北三陸ファクトリー」と連動して市場を開拓していきたいという。
「地方創生という政府方針のもと、洋野町も新たな市場開拓を進めています。例えばしいたけなど、洋野町には水産物以外にも評価の高い食材があります。こうした食材を首都圏に出荷したり海外に輸出したりする際、下苧坪さんたちが培ってきた人脈が生きてくるのです。現在も北紫ウニが輸出されている台湾に、洋野町のしいたけも出荷できないか検討しているところです。そういった意味でも、『北三陸ファクトリー』には大いに期待しています。町としても連動しながら事業を進めていきたいですね」
「北三陸ファクトリー」と連動した町の事業について言及する日當・副町長
震災後、洋野町では「北三陸 世界ブランドプロジェクト実行委員会」が立ち上がり、「キリン絆プロジェクト」の水産業支援を受けながら、新しいプロジェクトやいくつものブランドが生まれた。それらはすべて、地域を復興させるためのものだったが、下苧坪さんによれば「北三陸ファクトリー」こそが復興事業の集大成だという。これからどんな新しい商品が生まれ、日本や世界で地域ブランドとして認められていくのか、期待を込めて見守りたい。
世界に通用する地域ブランドを作るために、力を合わせて頑張ります!
(注)北三陸という地域名が指す範囲に、明確な定義はない。一般的には、岩手県宮古市から青森県八戸市までと考えられている。
取材協力/有限会社パワーボール、写真撮影/和田剛