活動について
各地域での活動
活動レポート
- 地元への深い愛情が人々を「絆」で結ぶ
- 郷土料理の商品化で食文化をつなぎ地元に誇りを取り戻す
- 人々の想いが新たなブランドを創り出す
- 被災した工場が被災地を応援するという取り組み
- 鯉ブランド復興にオール郡山で取り組む
- 宮城県の食材のファンを作る試み
「浜の漁師飯 浜のかあちゃん飯推進プロジェクト」事業報告・新商品試食会レポート (3/3)
多くの課題を乗り越えて
事業報告会が終わると試食の時間となった。試食会場には協議会の4団体が開発した、「沖なまこのしょうゆ漬け」「まる蟹の蟹味噌(がにみそ)」「烏崎(からすざき)アヒージョ」「潮目イナダのトロ味噌和え」が登場した。
きれいに盛り付けられた4団体の料理。写真は「烏崎アヒージョ」(左)と「潮目イナダのトロ味噌和え」
地元漁師たちの間で「酒の肴」として愛されてきた沖なまこを使用した「沖なまこのしょうゆ漬け」は、ほどよくコリっとした独特の食感が格別な珍味。沖なまこ自体が流通することが珍しく貴重な一品だ。
「まる蟹の蟹味噌」は、平爪蟹を使用した一品。殻ごと豪快にぶつ切りにした「ガニ(カニ)味噌」が、相馬のおふくろの味として根付いている。取り切れない殻がネックだったが、あえて殻ごとすりつぶした。臭みを抑え風味を出すために、水揚げしたばかりの蟹を浜茹でし、熟成させるひと手間も加えている。殻が入っているとは思えないなめらかさと、凝縮された濃厚さは、ご飯のお供にはもちろん、パスタソースやディップとしても食べることができる。
「烏崎アヒージョ」のホッキは身が肉厚。熱を加えると固くなるホッキだが、絶妙のタイミングでボイルしているため、とてもやわらかく仕上がっている。さらりとしたオリーブオイルにネギとシイタケのうまみが溶け込み、スープのようなおいしさが特徴だ。
大漁に水揚げされるブリの稚魚であるイナダを、価値のある商品に転化できないかと、商品化されたのが「潮目イナダのトロ味噌和え」。あえて「生食」で提供することで、もっちりとした食感と、トロのようなまろやかな舌触りが存分に味わえる。上品な味噌との相性も抜群の一品だ。
また、試食会場には「ツブ貝のごはん」も提供された。この料理に使用されている「ツブ貝の生姜煮」は、協議会が開発した中で唯一販売が始まっている商品。今回はご飯と炊きこんだアレンジ料理として披露された。ツブ貝のうまみがご飯に染み込み、生姜のピリッとしたアクセントが効いている。
試食会の参加者からは、「お酒に合いそう」や「おかずに最適」など高評価を得ていた。
完成度の高い料理の数々に、試食会参加者の評価も高かった
協議会のメンバーたちも丁寧に商品の説明を行っていた
「潮目イナダのトロ味噌和え」を開発した原釜青壮年部の小型船チームで、リーダーを務める松下護さんは商品の魅力を力強く語ってくれた。
「究極まで厳選したイナダの部位を使用しました。タレに使用している味噌やお酒は福島産です。特にお酒は相馬の純米吟醸『夢そうま』を採用しています。味付けを濃くしているので、お酒のつまみにはもちろん、ご飯やお茶漬けにも最適です。他にも、イナダの使わない部位を他の商品に使えないか考えています。商品開発を続けることはもちろんですが、福島産の商品が安全でおいしいということを多くの方に理解してもらえるよう、今後も努力していきたいです」
開発した商品の魅力を語る松下さん
また、販促ツールやパッケージ、ロゴマークのデザインなどを手がけた、Helvetica Design株式会社のデザイナーである遠藤令子さんにも話を聞いた。
「相馬双葉漁協には若手漁師が多く驚きました。漁業は後継者不足だと言われますが、相馬双葉地区では皆さんあこがれて漁師になるのです。魅力のある人が本当に多いですね。販促ツールの開発は、まずロゴマークのデザインからスタートしました。ロゴがなければ始まらないと考えたからです。良い意味で『馬鹿うまい飯』を『馬鹿真面目な人たち』が開発している。そこで『馬鹿うまめし』にしようと考えました。協議会の皆さんも賛同してくださり決定しました。販促物のボーターTシャツとエプロンは、これからイベントなどへの出店が増えると思うので、まず目に止まるようにと考えました」
遠藤さんは相馬双葉地区のことを深く知るために、現地に何度も足を運び、ときには漁師たちと朝まで酒を酌み交わすこともあったという。福島といえば「馬鹿うまめし」と認知されるブランドになれるよう、これからもデザイン面からサポートを続けていく予定だ。
遠藤さんはデザインをするにあたって現地に足繁く通った
協議会が歩んできた商品開発までの苦労に満ちた道のり。商品をブランド化するために行われた販促物をはじめとする数々の仕掛け。そして出荷制限による原材料確保や風評被害など、プロジェクトに取り組むことで見えてきた多くの課題。乗り越えるべき壁は決して少なくないが、たくさんの人たちの想いが詰まったプロジェクトから生み出された商品が、日本全国の人々に、食卓に届くことを期待したい。
福島の復興のために力を合わせて頑張ります!
文/伊地知由理、写真/和田剛、取材協力/有限会社パワーボール