活動について
各地域での活動
活動レポート
- 地元への深い愛情が人々を「絆」で結ぶ
- 郷土料理の商品化で食文化をつなぎ地元に誇りを取り戻す
- 人々の想いが新たなブランドを創り出す
- 被災した工場が被災地を応援するという取り組み
- 鯉ブランド復興にオール郡山で取り組む
- 宮城県の食材のファンを作る試み
宮城牡蠣の家2016レポート (2/3)
殻付き牡蠣のブランド化で牡蠣産業全体を底上げ
オープニングセレモニーの冒頭、主催者を代表して宮城県の若生正博・副知事から挨拶が行われた。
「宮城県の復興に対する、皆様のご支援に心より感謝を申し上げます。被災地では震災から5年が経とうとしています。水産物の有数な生産地である宮城県では、生産量が徐々に回復してきました。しかし、回復の途上で販路の減少に直面したのも事実です。原発事故による風評被害も根強く残っています。こうした厳しい状況の中、宮城県の牡蠣は『キリン絆プロジェクト』のご支援を受け、東京で販路開拓を始めることができました。昨年の『宮城牡蠣の家』には、60日間で1万2千人もの方々が来場してくださいました。開催期間が延び、日曜や祝日も営業する今年は、さらなる人出が見込まれることでしょう。牡蠣の生産量が回復したとしても、商品が売れなければ意味がありません。この現実をぜひご理解頂き、これからも宮城県の牡蠣を応援してください」
販路開拓の重要性について語る若生・副知事
オープニングセレモニーにはテレビ、新聞、専門誌など40を超えるメディアが取材に訪れ、関心の高さを伺わせた
続いて、宮城県漁協の経営管理委員会で会長を務める丹野一雄さんから、「宮城牡蠣の家」に対する意気込みが発表された。
「今年も『宮城牡蠣の家』を開催できることを嬉しく思います。震災から4年10ヵ月が経ちましたが、生産者は懸命に牡蠣の普及に励んでいます。宮城県漁協としても、殻付き牡蠣のブランド化戦略を継続することで、牡蠣養殖全体の底上げを図っているところです。『宮城牡蠣の家』が開催される大手町は、宮城県の殻付き牡蠣のスタート地点だと言えるでしょう。プレミアムブランド牡蠣も、昨年より2種類増えて5種類になりました。加えて、志津川産と松島産の殻付き牡蠣もご賞味頂けます。ぜひこの機会に、『宮城牡蠣の家』に来て頂き、安全で安心な宮城県産の牡蠣を堪能してほしいと思います」
安全で安心な宮城県産の牡蠣を、多くの人が食べに来てくれることを期待する丹野・会長
また、キリンビール株式会社の布施孝之・代表取締役社長からも挨拶が行われた。
「多くの方々のご協力を得て、『宮城牡蠣の家』を無事に開催できたこと、誠におめでとうございます。昨年は売り切れる牡蠣が出るほど大盛況でしたが、今年も成功すると確信しています。『宮城牡蠣の家』を通じて一人でも多くの人に、宮城県の殻付き牡蠣が順調に回復していることを、知って頂ければと思います。宮城県とキリングループはご縁が深く、2007年にキリンビールのテレビCMで宮城県の牡蠣を使用したのを機に、県の食材をPRするプロジェクト(M・Kプロジェクト)を発足させました。震災後の2011年7月には『キリン絆プロジェクト』を立ち上げ、食産業を中心に復興支援を続けています。今後も宮城県の復興のお役に立てるよう、引き続き応援をさせて頂くつもりです」
布施・代表取締役社長は、「宮城牡蠣の家」が今年も成功すると力強く語ってくれた
オープニングセレモニーには、農林水産省の佐藤英道・農林水産大臣政務官も駆けつけ、「宮城牡蠣の家」に対して激励の言葉を贈ってくれた。
「私は宮城県名取市の出身です。本日は宮城県を挙げて牡蠣をPRするイベントを行うと聞き、応援団の一人としてやって参りました。震災後、県や漁協、そして生産者の皆さんが苦労しながら、宮城県の牡蠣を守ってくださったお陰で、生産が回復していることを嬉しく思います。震災から今日まで復興に尽力されている、キリングループの皆さんにも、宮城県人の1人として感謝を申し上げます。宮城県では良質な種牡蠣が各地に送られるなど、日本の牡蠣産業において重要な役割を果たしています。『牡蠣の原点は宮城』という自負を持って頑張ってください。『宮城牡蠣の家』が大盛況になることを願っています」
激励の言葉を贈る佐藤・農林水産大臣政務官
すべての挨拶が終了すると、オープニングセレモニーを盛り上げる強力な助っ人たちが紹介された。登場したのは、「オイスター職人・佐久間知彦さん」「オイスターガールズ」「むすび丸」の皆さんだ。
応援に駆け付けた、(左から)「むすび丸」「オイスター職人・佐久間さん」「オイスターガールズ」の皆さん
「オイスター職人」の佐久間さんは、牡蠣のおいしさ・素晴らしさを伝えるために全国を巡っている。「宮城牡蠣の家」では、毎月第三水曜日の「すいさんの日」に合わせ、宮城県産の殻付き牡蠣と日本酒のマッチングを学べるセミナーを開催する予定だ。
「オイスターガールズ」は宮城県の牡蠣を心から愛する女性3人が集まり、昨年11月に結成された。オイスターホワイトの衣装と牡蠣のアクセサリーを身につけて、宮城県の牡蠣をおいしく食べながら広めていく活動を続けている。
仙台・宮城観光PRキャラクターの「むすび丸」は、宮城県のおいしい水産物をPRするために、ねじり鉢巻きを締め、法被を着て登場してくれた。
登壇者と助っ人による記念のフォトセッションも行われた
オープニングセレモニーの最後には、宮城県漁協で経済事業担当理事を務める阿部誠さんから、「宮城牡蠣の家」で提供される殻付き牡蠣についての説明が行われた。
「唐桑」の牡蠣では、殻に付く雑草や雑貝を取り除くために牡蠣を熱湯に浸す「温湯(おんとう)処理」を行い、養殖ロープに吊るされたそれぞれの牡蠣の間隔を広げ栄養分を多く吸収できるよう「耳吊り」という作業も実施している。通常、1年で成育するものを3年かけてじっくり育てる。ブランド名の「三陸唐桑もまれ牡蠣」は、内湾で育てた牡蠣を外洋に移動させ、荒波の中でもまれるように育てることに由来している。
「長面浦」の牡蠣は、第1級河川の河口で育てられる。周囲を山に囲まれているためミネラルが豊富で、牡蠣養殖の環境に適している。約10ヵ月という短期間で成育し、甘みのある牡蠣になるという。
「鳴瀬」も第1級河川の河口で育てられるが、内湾と外洋の2つの漁場を持つ。生産者は強いこだわりと競争心を持って養殖に励んでいる。殻は小さいが中身の詰まった牡蠣に仕上がるのが特徴だ。
今年から新たにブランド牡蠣に加わった「荻浜」は、養殖牡蠣の発祥の地として知られている。通常、1本のロープに500個の牡蠣を吊るすところを50個に減らすことで、大きなサイズの牡蠣を作っている。若い生産者がブランド化に取り組んでいることも特徴で、「荻浜」の牡蠣は「水魂(みずたま)」というブランド名を持つ。
「万石浦」の牡蠣は、淡水と海水が混じり合うことで塩分濃度が低くなる、「汽水域」と呼ばれる場所で育つ。日本でも有数の種牡蠣の産地であり、全国各地に出荷されている。生産者は種牡蠣の中から厳選したものを養殖するため、高品質の牡蠣が育つという。
「宮城牡蠣の家」には「志津川」と「松島」の2地域を加えた、計7つの産地から宮城県産の牡蠣が出荷される。その中の5種類をプレミアムブランド牡蠣として提供しながら、ファンを増やすことを目指していく。
「宮城牡蠣の家」で提供される牡蠣について説明する阿部・経済事業担当理事
牡蠣の説明はスライドを使って行われた
そしてオープニングセレモニーが終了すると、いよいよ試食の時間となった。