活動について
各地域での活動
活動レポート
- 地元への深い愛情が人々を「絆」で結ぶ
- 郷土料理の商品化で食文化をつなぎ地元に誇りを取り戻す
- 人々の想いが新たなブランドを創り出す
- 被災した工場が被災地を応援するという取り組み
- 鯉ブランド復興にオール郡山で取り組む
- 宮城県の食材のファンを作る試み
KAMAROQ株式会社 「釜石海まん」商品発表会レポート (3/3)
まちづくりへの強い思いから連携が生まれた
中村さんと宮崎さんによるプレゼンテーションが終了すると、野田武則・釜石市長をはじめとする来賓者から、激励のメッセージが贈られた。
「このたびのキリン絆プロジェクトのご支援に、心より感謝申し上げます。震災から4年7ヵ月が過ぎ、釜石市では仮設住宅から復興住宅に移る被災者の方も多くなりました。市としても、住宅建設や地盤のかさ上げ工事など、生活基盤の回復に力を入れています。しかしこれからは、経済をもっと活性化していかなくてはなりません。釜石市では炭鉱の世界遺産登録やラグビーのワールドカップ誘致を実現しましたが、経済活性化のためには市民による起業が不可欠です。自分たちの力で地域産業を盛り上げることは簡単ではありませんが、KAMAROQ株式会社の皆さんはその第一歩を踏み出された。これからの活躍にさらに期待しています」
KAMAROQ株式会社の取り組みが、釜石市の経済活性化に寄与することを期待する野田・釜石市長
続いて、キリン株式会社CSV推進本部の林田昌也・執行役員CSV推進部長からも、激励の挨拶が行われた。
「多くの苦労を乗り越え、今日という日を迎えられたこと、誠におめでとうございます。水産業者だけでなく異業種の方々が連携して、大きな目標に向かって新たなスタートを切られたことを嬉しく思います。商品が完成したことで、これからいよいよブランディングが始まります。商品というのは一度発売したら、作り手ではなく買い手のものになりますが、ブランド化のためにはおいしいだけではダメです。どうやって消費者の日常を楽しくできるかが、ブランディングには重要になります。今日はこれから始まる、新たな長い道のりの第一歩となるでしょうが、頑張ってください。キリングループとしても、これからも協力を続けていきたいと思います」
ブランディングの重要性について語る林田・執行役員CSV推進部長
また、キリングループとともに「復興応援 キリン絆プロジェクト」水産業支援を推進している日本財団から、荻上健太郎・海洋グループ上席チームリーダーも壇上に上がった。
「このたび発売されることになった『釜石海まん』は、海の幸と山の幸に加え、多くの人々の思いが詰まった『人の幸』の商品でもあると思います。退路を断って新しいスタートを切った皆さんには、これからも多くの試練が待ち受けていると思いますが、『人の幸』を最大限に活かして、素晴らしい地域ブランドを育ててほしいと期待しています」
「釜石海まん」を通じた地域ブランドの確立に期待を寄せる荻上・上席チームリーダー
そして日本財団と同じく、「復興応援 キリン絆プロジェクト」水産業支援の実施に協力している、一般社団法人RCFの藤沢烈・代表からも激励のメッセージが贈られた。
「今回のプロジェクトが始まる前、釜石市に眠る未利用資源を活用しながら、市の付加価値を高めたいというお話を聞きました。そのお話に強い感銘を受け、支援に着手したことを覚えています。新商品が完成して嬉しく思いますが、大切なのはどのように産業を興して雇用を生むかです。『釜石海まん』の完成を機に皆さんがさらに活躍し、最終的には『海まんがあるから釜石に来たい』と言ってもらえるような商品になることを願っています」
「釜石海まん」が地域への誘客の起爆剤になることを願う藤沢・代表
激励のメッセージが一通り終了すると、小泉進次郎・衆議院議員から最後のメッセージが贈られた。
「本日の商品発表会、誠におめでとうございます。今から1年前、まだ研究段階の『釜石海まん』を食べさせて頂きました。でも今日の新商品はまったく違うものになっていました。この間、どれほど試行錯誤しながら試作品を作り続けてきたのか。皆さんの努力に心から敬意を表します。釜石市には日本屈指の釜石ラグビーがありますが、例えば、冬の寒い試合のときでも、ホカホカの『釜石海まん』があればお客さんも喜ぶことでしょう。このような形で、『釜石海まん』をきっかけに様々なアイデアが生まれると思います。『釜石海まん』が釜石全体の魅力を高める入口となれるよう、これからも頑張ってください」
「釜石海まん」が釜石全体の魅力を高めるきっかけになることを期待する小泉・衆議院議員
各方面からのあたたかいメッセージを受け、KAMAROQ株式会社の中村さんが謝辞を述べた。中村さんによれば、業種を超えた連携が難しく、メンバーそれぞれが本業で忙しい中でも、苦労して連携を実現できたのは、まちづくりへの強い思いがあったからだという。そのまちづくりのイメージとは、様々な理由で釜石を離れてしまった子どもたちが、また戻りたいと思えるまち。そのために「釜石海まん」のブランド化を実現し、ただ儲かるだけでなく、連携体制が作られるだけでなく、将来にわたってこの連携体制を続けられる人材を残していくことが、最終的な目標になるのだという。
中村さんによる心のこもった謝辞が終わると、いよいよ試食の時間になった。試食会場では、商品発表された「泳ぐホタテのアヒージョ」「三陸天然鮭のグラタン」「三陸極鮮炙り鯖のカレー」の3種類の「釜石海まん」が、ホカホカの状態で提供された。
蒸し器の中でホカホカになっている「釜石海まん」
食べやすくカットされた「釜石海まん」は、種類をわかりやすくするため、異なる色の旗が立てられていた
試食会の冒頭、林田・執行役員CSV推進部長が乾杯の音頭を取った。会場で提供されたキリングループの飲料の中には、岩手県遠野産のホップを使った期間限定商品の「一番しぼり とれたてホップ生ビール」も登場。キリングループでは50年以上にわたり、遠野市の農家にホップ作りをお願いしている
試食会の参加者は、KAMAROQ株式会社のメンバーから具材を食べやすくするための工夫や1日あたりの生産個数、海鮮中華まんの生地で具材となるあん(餡)を包む包あん機の管理の難しさなど、開発から生産に至るまでの様々なエピソードを聞きながら、3種類の「釜石海まん」を味わっていた。
小泉・衆議院議員からは「こんなおいしい海鮮中華まんじゅうは食べたことがない。魚介類の新しい食べ方だね」と太鼓判。漁業者だけでなく、農家の収入源になっていることも評価していた
KAMAROQ株式会社では今後、都内の百貨店以外にも、釜石市内の道の駅や土産店、大手量販店などで「釜石海まん」を販売。冷凍保存すれば3ヵ月は持つという「釜石海まん」を、手にする人も着実に増えることだろう。また、飲食店ではイートイン形式でも提供していく予定だという。近い将来、会社のホームページでも販売を開始することになっている(KAMAROQ株式会社のホームページはこちら:http://kamaroq.com/)。
さらに、今回の商品発表会で登場したホタテ、鮭、鯖の3種類の具材以外にも、ワカメやメカブといった海藻やイカを具材にするための研究開発も続けている。そして将来的には、「釜石海まん」以外の新たな商品も開発していくことを考えている。
「それぞれが本業の資金繰りで大変な中、異業種が連携して新しい商品を開発するというのは、資金の面でも大変難しいものでした。そんな厳しい状況の中、キリン絆プロジェクトによるご支援を頂き、量産に欠かせない包あん機を購入できたことは、私たちにとって大きな励みになりました。ご支援のお陰で、商品開発のスピードも上げることができましたから。それが今後の商品開発にも、必ず生きてくると思います」
KAMAROQ株式会社の宮崎さんは、「復興応援 キリン絆プロジェクト」による支援が果たした役割の大きさを語ってくれた。
任意団体として水産、製菓、酒造などを手掛ける5社から始まった「釜石六次化研究会」は、商品の完成を機にKAMAROQ株式会社を設立。新たにウニやアワビを獲る漁師や味噌の製造会社などが参加し、8つの事業者で構成されるまでになった。今後も商品の研究開発として立ち上がった「釜石オープンキッチンプロジェクト」という名が示す通り、「釜石六次化研究会」やKAMAROQ株式会社を誰にでも開かれた組織にしたいと考えている。そんなオープンで風通しのよい組織から、さらに新しい商品が生まれ、釜石ブランドとして定着することで、より多くの人を惹き付ける地域になっていくことを期待したい。
釜石の地域ブランドを確立するために、力を合わせて頑張ります!
取材協力/有限会社パワーボール、写真撮影/和田剛