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付加価値の高い商品で人・街・産業を元気にする

気仙沼水産資源活用研究会 「kesemo」商品発表会レポート (2/3)


気仙沼の水産資源をフル活用した商品開発

 商品発表会ではまず、菅原茂・気仙沼市長から開会の挨拶が行われた。
 「気仙沼市は震災により、海辺にあった水産加工の事業所が壊滅しました。そのため、何ヵ月も商品を出荷することができず、その間に他の産地に売り場を取られてしまいました。この状況は今も続いています。また、気仙沼市は震災前から少子高齢化が深刻でした。若者は高校を卒業すると地元を離れ、戻って来なくなります。その結果、存続が危ぶまれる『消滅可能性都市』にも指定されてしまいました。地域が抱えるこれらの課題を解決するために設立されたのが研究会です。参加する事業者が技術を持ち寄りそれぞれの強みを発揮することで、他では真似のできない付加価値の高い商品を生み出し、新たな産業を興し、若者を呼び戻すことを目指しています。商品開発の材料には主に気仙沼の水産資源が活用されますが、食品だけでなく化粧品や薬も開発しています。これは開発する商品の視野を広げることで、付加価値の高い新商品を生み出すためです」

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気仙沼市が抱える課題と研究会が果たす役割について話す菅原・市長。
気仙沼市自体も研究会の活動に参画している

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会場に飾られた研究会の開発商品

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商品発表会にはメディアも多数、取材に訪れていた

 また、菅原・市長からは東北の自立的復興を実現するために、人づくり、街づくり、産業づくりに取り組む団体である、「東北未来創造イニシアティブ」(http://tohokumirai.jp/)の紹介も行われた。この団体では大手企業から若手社員を派遣してもらい、東北各地の自立的復興を後押しする活動を続けている。研究会にもスタッフとして若手社員が派遣されていて、商品開発から販売に至るマーケティングの様々な場面に協力しているという。
 開会挨拶が終了すると、来賓の紹介が行われた。研究会に多大な支援を行っている協力者として、キリン株式会社CSV本部の林田昌也・執行役員CSV推進部長と日本財団の荻上健太郎・海洋グループ上席チームリーダーも紹介された。
 続いて、長島忠美・復興副大臣から来賓挨拶が行われた。
 「本日の商品発表会、誠におめでとうございます。研究会は2年にわたり、企業・団体・学会・有識者などの協力を得ながら商品開発を進めてきました。その地道な活動に敬意を表します。気仙沼は日本の中でも有名な地域ですが、日本だけでなく世界に向けて発信できるものがたくさんあるはずです。気仙沼の商品がグローバルスタンダードに成り得ると思います。そのために必要なことは、人材を育てていくということなのでしょう。復興庁としてもできる限りの応援を続けていきたいと思います」

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気仙沼から世界に発信できる商品が生まれることへ期待を寄せる長島・復興副大臣

 また、小野寺五典・衆議院議員も来賓挨拶に立った。
 「私は気仙沼で生まれ育ちました。この土地には、素晴らしい資源がたくさんあります。震災の影響は計り知れないものがありますが、多くの方々の協力を得て、本日の商品発表会に辿り着いた研究会の皆さんを誇りに思います。皆さんが開発される商品が、世界水準になることを心から願っています」

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小野寺議員は研究会のメンバーが震災を乗り越えて商品を完成させたことを誇りに感じている

 来賓挨拶が終了すると、「kesemo」ブランドの商品発表が行われた。「サメ類」「貝類」「海藻」の3つのワーキンググループの代表が、商品を開発するまでの経緯や「売り」となる特長について紹介してくれた。
 「サメ類」の商品発表をしたのは、研究会の石渡・副会長。最初に紹介されたのは「MARINUS(マリナス)」という名称の化粧品だ。気仙沼を象徴する海(MARIME)という言葉から名付けられた。ワーキンググループのメンバーは、気仙沼産のサメのフカヒレから熱を加えずにコラーゲンを抽出することに成功。この「フカコラーゲン」は保湿効果が極めて高いという。気仙沼市の大島で採れるユズ種子のエキスと配合して商品化した。商品はミストとジェルの2種類。どちらも中身はフカヒレのようにぷるぷるで、うるおいや保湿に優れている。
 また、サメ肉を使った唐揚げの「サメから」も紹介された。サメ肉はどのような商品にすればよいか、試作を重ねた結果、シンプルに肉の旨味を味わえる唐揚げに辿り着いたという。「サメから」はまだ発売前だが、昨年の宮城県加工品品評会で特別賞を受賞するなど、その実力はすでに折り紙つきだ。

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商品発表を行う石渡・副会長

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発表はスライドを使って行われた

 続いて研究会の監事を務める佐藤俊輔さんが、「貝類」のプレゼンテーションを行った。気仙沼では様々な貝が獲れるが、最終的に選んだのは水揚げ量の多いホヤだった。ホヤには生臭いイメージが強く、好き嫌いが分かれるが、臭みを取り除くことで新たな商機が生まれると考えたようだ。研究や試作を重ねた結果、ホヤを酵素で分解し殺菌することで、旨味や甘味を増すことに成功。「気仙沼ホヤソース」の商品化につながったという。2015年8月に発売された「気仙沼ホヤソース」は、そのまま食べても臭みがなく、煮物や炒め物にも合うと好評。11月には「調味料選手権2015」で最優秀賞を受賞するなど、食のプロからも高い評価を得ている。

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「気仙沼ホヤソース」のプレゼンを行う佐藤・監事

 最後に清水敏也・参与が、開発中商品である「MARUGOTO三陸わかめドレッシング(仮称)」を紹介してくれた。「海藻」のワーキンググループでは、消費者に馴染みが深く素晴らしい食材であるワカメを使って、商品開発ができないかを考えた。粉にしたり、ゼリーにしたり、アイスクリームに混ぜるなど、様々な試行錯誤を続けた末、多くの人に食べてもらえるドレッシングとして商品化することにしたという。ワカメは大きく「葉(ワカメ)」「茎」「メカブ」の3つの部位に分けられるが、葉先や色落ちした部位は売り手が付かないことが多い。「MARUGOTO三陸わかめドレッシング」はその名の通り、3つの部位すべてを使用し、今まで間引いていた部分も丸ごと有効活用している。ドレッシングはノンオイルとオリーブオイルの2種類。サラダにかけるのはもちろん、揚げ物にかけても脂身が取れてヘルシーに食べられるという。

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「MARUGOTO三陸わかめドレッシング」について紹介する清水・参与

 「MARINUS」の化粧品と「気仙沼ホヤソース」は、現在、宮城県や東京都の店舗で販売されているほか、一部、インターネット販売も行われている。また、「MARINUS」の化粧品はネット販売用のウェブサイトも完成している(http://kesemo-marinus.com/)。
 それぞれのワーキンググループが切磋琢磨する中で生まれる、「kesemo」ブランドの商品。完成までの道のりは長く、決して平たんではない。しかし、新しい商品を作ることで地域が元気になり、人が集まるという思いが、彼らを突き動かしているのだろう。

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