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越喜来レポート

地域に眠る資源を活用して復興を果たす (2/3)

地元食材を使った作り手の顔が見える台所産業

 ミサンガ作りを続けていくうちに、震災前の仕事が再開して復職を果たす人、研修を受けて新しい仕事に就く人も現れた。そうしてミサンガ作りを卒業する人が出ると、新しい人に仕事を譲るというサイクルもできるようになった。
 しかし、ミサンガ作りも1年を迎えた頃になると、次第に売り上げが減少するようになった。当初は2年間の計画で始めたものの、残りの1年を乗り越えられるか危うい状況だったという。
 「宮城県の北部から岩手県の北部まで、約350人の女性たちは10チームに分かれてミサンガ作りを行っていました。各チームで一緒に講習を受けながら、ミサンガ作りに励んでいたのですが、次第に彼女たちの間に共同体意識が芽生えたのです。避難所や仮設住宅、借り上げ住宅などを転々としながら、常に誰かとくっついたり離れたりを繰り返していたので、もうこんな思いはしたくないと感じていたのでしょうね」
 そこで八木さんたちが着目したのが、地元食材を使った、作り手の顔が見える台所産業だった。
 ミサンガ作りに参加していた女性の大半は漁師の妻で、海の食材の扱い方は上手だった。その一方で、ほとんどの人が地元に海の幸という「資源」があることには気づいていなかった。
 例えば、干しアワビの製造工程で出るアワビの肝やマグロの心臓などは、漁師がおいしいと好んで食べる食材であるにもかかわらず、鮮度劣化が早かったり市場に出すほど量がまとまらないなどの理由で、流通することはほとんどなかった。また、調理に手間がかかる白身魚のカナガシラ(ホウボウ科)も、おいしい魚であるにもかかわらず、値がほとんど付かない状況だった。
 地元に眠る未利用資源を活用して、女性たちに社会復帰してもらい、誇りを取り戻してほしい。そんな願いを込めて、八木さんたちは2012年5月、「漁師のおつまみ研究所」を設立した。越喜来地区では現在、ミサンガ作りに携わっていた女性のほか、求人募集を見て集まった女性など、10人が正規社員として働いている。
 越喜来出身の平田清美さんもその一人だ。
 「以前はホタテの養殖をしていたのですが、震災で仕事を失いました。そこでミサンガ作りに参加したのですが、震災直後は屋内で作業できる場所がなく、廃材やビールケースを机や椅子の代わりにして、屋外で作業をしていました。ミサンガを作るチームのメンバーはほとんどが知らない人同士でしたが、作り方の講習を受けたり、一緒に作業する中で仲良くなっていきました」
平田さんは、震災直後に収入を得られたこと以上に、他の女性たちと一緒にミサンガ作りをしながら親睦を深めたことで、活動そのものが心の支えになったと感じている。

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「漁師のおつまみ研究所」で働く女性社員の皆さん。写真右端が平田清美さん

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