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大船渡レポート

「食のまち」として復興を果たす (3/3)

新商品開発と販路拡大がカギ

 2013年7月に設立されたばかりの「三陸パートナーズ」だが、すでに多くの事業が計画され、実際に動き始めているものもある。
 新商品開発の分野では、「キッチンデリバリー」「パーツセレクション」「未利用資源の有効活用」という3つのビジネスモデルを展開していく。
 「キッチンデリバリー」では、水産加工品の付加価値を高めるために、海産物にスープやソースを組み合わせ、手軽に調理できる商品を開発している。例えば、サケやサンマにカレーやパスタなどのソースを加えるというもの。商品だけでなく、その調理法も家庭やレストランに提案していく予定だ。
 「パーツセレクション」は、レストランや中食などの調理ニーズに合わせ、食材の形状や加工を細分化して提供することで、飲食店での調理の手間を最小限に抑えようという試み。調理の手間が減れば、飲食店の人件費削減にも貢献できる。

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スモークさんまのオリーブオイル漬け(上)や真いか・たこ・えびを使ったリゾット(下)など、消費者や飲食店に受け入れられやすい商品開発をモットーにしている(写真提供/協同組合「三陸パートナーズ」)

 また、「未利用資源の有効活用」では、復興のシンボルとしてオキアミの一種であるイサダのブランディングを計画している。イサダはこれまで、養殖魚や釣りのエサとして用いられてきたが、年々、需要が減少していた。イサダが大量に水揚げされる大船渡市では、震災前からエサ以外の新たな活用方法を模索していたが、震災を機に、イサダの食用としての商品開発を本格化させていく予定だ。

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オキアミの一種であるイサダ(上)は、大船渡市で多く水揚げされている(下)(写真提供/協同組合「三陸パートナーズ」)

 「三陸パートナーズ」では今後2年間で、50品目以上の商品を開発することを目指している。
 開発された商品は、レストランをはじめとした飲食店に出荷されたり、お歳暮などのギフト商品として百貨店で販売されたりすることを想定している。新商品の中には、すでにサンプルを出荷して商談が始まっているものもある。今後は、食品見本市などのイベントにも参加して、大船渡や三陸のブランドとして商品を発表していく予定だ。商品の販路を広げるために、東京など大都市に事務所を設立したり、オンラインショップを開設することも視野に入れている。

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大船渡市や三陸のブランドを前面に打ち出した商品開発や販売戦略がカギを握る。写真は真いかをしゃぶしゃぶにした料理(上)とフリット(洋風天ぷら)にアレンジしたもの(下) (写真提供/協同組合「三陸パートナーズ」)

 他にも、女性が働きにくい職場だと言われている水産加工の現状を変えていくために、「三陸パートナーズ」では女性へのリサーチやヒアリングを計画している。最終的には、パウダールームや美しいトイレ、保育室、カフェテリアなどを設置した、女性にやさしい水産加工場の提案と普及に努めていくことを考えている。
 また将来的に、岩手県や大船渡市の行政機関と協力したまちづくりも見据えている。まちづくりの一環として、2015年に開設が予定されている産直センターに、レストランをオープン。水産物を生産・加工する場所はあっても、食べるところがないと言われてきた大船渡市で、観光客が気軽に海の幸を味わえる機会を提供すると同時に、水産加工場の見学なども盛り込むことで、「食のまち」としてアピールしていく狙いだ。
 「三陸パートナーズに参加している6社は、通常業務との2足のわらじで頑張っています。それはすべて、大船渡市を盛り上げたい一心からです。私たちの取り組みが順調に進んでいけば、参加してくれる会社の数もさらに増えるでしょう」
 及川社長はそう言って目を細めた。
 キリングループが展開する「復興応援 キリン絆プロジェクト」では、食を通じて地域の復興を目指す「三陸パートナーズ」を支援している。その取り組みはまだ緒についたばかりだが、大船渡の人々の復興にかける思いと水産業再生への願いとともに、必ずや大きな飛躍を遂げてくれることだろう。

写真提供/協同組合「三陸パートナーズ」
取材協力/有限会社パワーボール、写真撮影/和田剛

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