活動について
各地域での活動
活動レポート
- 地元への深い愛情が人々を「絆」で結ぶ
- 郷土料理の商品化で食文化をつなぎ地元に誇りを取り戻す
- 人々の想いが新たなブランドを創り出す
- 被災した工場が被災地を応援するという取り組み
- 鯉ブランド復興にオール郡山で取り組む
- 宮城県の食材のファンを作る試み
山田町贈呈式レポート 地元の海が輝くために (3/3)
これからも海と生きていく
事業方針の発表が終了すると、「復興応援 キリン絆プロジェクト」の贈呈式の時間となった。
はじめに、キリンビールマーケティング株式会社の吉田健一・岩手支社長から、贈呈者挨拶が行われた。
「皆様のプロジェクトが、キリン絆プロジェクトの支援対象に選ばれたこと、誠におめでとうございます。事業方針発表の中で、山田町では当たり前の味でも東京では特別な味になるというお話がありました。これは大きな差別化のポイントですし、ブランディングの本質だと思います。生の魚を食べたとき、おいしいと感じてもどこの産地だったかはすぐに忘れてしまいます。そこに地元の味付けをすることで、山田町の商品であることを覚えてもらえるでしょう。また、今回のプロジェクトは山田町で活動する18社が3グループに分かれて実施されます。個人の力では限界があったりしますが、チームで取り組めば一人一人の力が掛け算になると思います。皆さんが協力すれば18倍になると思うので、ぜひ力を合わせて町の復興のけん引役になってほしいと思います」
プロジェクトのメンバーが町の復興のけん引役になることへ期待を寄せる吉田・岩手支社長
また、日本財団の海洋グループでチームリーダーを務める、荻上健太郎からも贈呈者挨拶が行われた。日本財団はキリングループが拠出した寄付金で基金を創設し、支援金の助成を行うことで被災地の水産業支援をサポートしている。
「ブラジルのワールドカップでは、前回優勝国のスペインがグループリーグで敗退しました。これはスター選手という個人が頑張るだけでは、結果が伴わないことを意味しているのかもしれません。今回のプロジェクトでも、それぞれの会社だけでは商品開発や販路開拓を実現するのは難しいかもしれません。でもグループとして取り組むことで、目指すところにたどりつけるのだと思います。事業の成功には困難も多いでしょうが、ぜひ皆さんで力を合わせて乗り越えてください」
荻上・チームリーダーは、グループでプロジェクトに取り組むからこそ大きな壁も乗り越えられると考えている
続いて、キリン株式会社CSV推進部キリン絆プロジェクトの野田哲也・リーダーより、贈呈内容の説明が行われた。今回、「やまだの海が輝くプロジェクト」を実施する3グループと山田町商工会に助成される3070万円の支援金は、それぞれが実施する新たな水産加工品の開発、ブランディング活動、販路拡大、情報発信などに活用される。
贈呈内容の説明が終わると、キリンビールマーケティング株式会社の吉田・岩手支社長と日本財団の荻上・チームリーダーから、3グループと山田町商工会の代表に目録が贈呈された。
目録の授受を行った、プロジェクトメンバーと山田町、キリングループ、日本財団の関係者
「このたびは素晴らしいご支援を頂いたと感じています。今回のプロジェクトが、この先の道しるべになるよう頑張りたいと思います。これからメンバーたちは、緊張感を持ってプロジェクトに取り組んでいきますので、応援をよろしくお願い致します」
受贈者を代表して、山田マリンプロジェクトの川石会長が、プロジェクトに対する意気込みを語ってくれた。
プロジェクトに対する意気込みを語る川石会長
贈呈式が終わると、試食会の時間となった。テーブルには、山田町でとれた秋鮭とキャベツに自分たちで発酵させた麹を加えた料理をはじめ、しめサバやサンマの押し寿司、イカの塩辛、サラダこんぶ、アカモク(きばさ)など、各グループの既存商品や開発中の商品が並んだ。
試食会のテーブルに並んだ料理の数々
参加者たちはグループメンバーから、「しめサバやサンマの押し寿司は冷凍したものを自然解凍するので食べたいときに食べられる」「アカモクはメタボ対策に効果的」など、興味深い話を聞きながら多彩な山田の幸を堪能していた。
参加者に商品の特徴を説明する、三陸山田シーマンズの木村代表
また、「極牡蠣」としてブランド化を目指す、山田町の真ガキも提供された。「生でもおいしいけど、蒸すと違ったうまみがある」という山田町の真ガキ。試食会では、蒸したものと燻製にしたものが提供された。今が旬だという大粒のカキを食べると、参加者たちの表情も自然と笑顔になった。
大粒でコクがある山田町の真ガキ
一口食べると思わず笑顔になる(右端はメディアの取材に答える山田マリンプロジェクトの川石会長
山田町が一丸となって取り組む今回のプロジェクト。その名前を「やまだの海が輝くプロジェクト」とした背景には、復興した山田町を思い描いたとき、きっと海は輝いているはずという思いがあったという。震災を経てもなお、海とともに生きることを選んだ山田町の人々の思いが、商品やブランドを通じて全国に波及していくことを願いたい。
(注)第1次産業である農林水産業が、農林水産物の生産だけにとどまらず、それを原材料とした加工食品の製造・販売や観光農園のような地域資源を生かしたサービスなど、第2次産業や第3次産業にまで踏み込むこと。
取材協力/有限会社パワーボール、写真撮影/和田剛