活動について
各地域での活動
活動レポート
- 地元への深い愛情が人々を「絆」で結ぶ
- 郷土料理の商品化で食文化をつなぎ地元に誇りを取り戻す
- 人々の想いが新たなブランドを創り出す
- 被災した工場が被災地を応援するという取り組み
- 鯉ブランド復興にオール郡山で取り組む
- 宮城県の食材のファンを作る試み
釜石贈呈式レポート 業種を超えた連携で地域発の食ブランドを目指す (3/3)
誰にでも門戸を開くオープンなプロジェクト
事業方針の発表が終了すると、「復興応援 キリン絆プロジェクト」の贈呈式の時間となった。
はじめに、キリン株式会社CSV推進部の林田昌也・部長から、主催者挨拶が行われた。
「釜石六次化研究会の皆さん、キリン絆プロジェクトの支援対象に選ばれたこと、誠におめでとうございます。釜石の水産業は830ある漁業者がすべて被災するなど、甚大な被害を受けました。震災から3年半が過ぎましたが、この間の皆さんの復興への努力に、心より敬意を表します。今回のプロジェクトが軌道に乗ることで、震災復興にとどまらず、新しいブランドという価値創造につながることを願っています。そして研究会メンバーの5社だけでなく、オール釜石と呼べるほど大きな取り組みへと発展し、地域創生につながることを期待しています」
プロジェクトを通じて、価値創造と地域創生が実現することに期待を寄せる林田部長
また、日本財団の海洋グループでチームリーダーを務める、荻上健太郎からも主催者挨拶が行われた。日本財団はキリングループが拠出した寄付金で基金を創設し、支援金の助成を行うことで被災地の水産業支援をサポートしている。
「釜石は水産業がとても盛んな町です。そんな海と生きてきた町を、大震災が襲いました。今回のプロジェクトの中心メンバーは、釜石で活動する5社ではありますが、行政である釜石市や郷土料理の研究グループ、そして震災直後に設立され、現在も釜石で復興支援を継続している釜援隊協議会など、多彩な協力者がいると聞いています。そうした外部の協力も存分に活かして、ぜひ地域復興を実現してほしいと思います。皆さんの益々のご活躍を願っています」
多彩な協力者の存在を活かした地域復興の実現を待望する荻上・チームリーダー
続いて、キリン株式会社CSV推進部キリン絆プロジェクトの野田哲也・リーダーより、贈呈内容の説明が行われた。今回、「釜石六次化研究会」に助成される3千万円の支援金は、高付加価値商品の開発、ブランディング活動、販路拡大、情報発信などに活用される。
贈呈内容の説明が終わると、キリン株式会社の林田・部長と日本財団の荻上・チームリーダーから、「釜石六次化研究会」の宮崎会長に目録が贈呈された。
目録の授受を行った林田部長(右)、宮崎会長(中)、荻上・チームリーダー
「このたびのご支援に、心から感謝を申し上げます。震災後に釜石を訪れたとき、1000人を超える人たちが1本のローソクだけで避難をしながら、一切れのパンを分け合ったと聞いています。地域の中で連携するというのは難しいことかもしれませんが、パンを分け合えたように、業種も立場も違う人たちが協力することは可能だと信じています。そして釜石の山や海には、魅力的な食材がたくさんあります。景色もとても素晴らしいです。こうした宝の山を活用できるよう、たくさんの人たちと連携して、これからもプロジェクトを進めていきたいと思います」
目録を受け取った宮崎会長は、支援金への感謝を述べるとともに、プロジェクトに対する固い決意を表明してくれた。
目録の授受が終わると、野田武則・釜石市長より、激励のメッセージが贈られた。
「震災から3年半が過ぎ、釜石では住居の再建も進んでいますが、暮らしや産業が復興しなければ、長く持続する地域にはなりません。産業の復興に向けて、釜石市では太陽光パネルの立地拠点に名乗りを上げました。また、食ブランドの検討委員会も立ち上げています。今回のプロジェクトは、新たな食ブランド創出の先行事例となることでしょう。そして釜石六次化研究会のメンバーの活躍を見て、後に続く人たちが出てくることを、釜石市としても大いに期待しています」
釜石六次化研究会のメンバーの活躍が、後に続く人たちに刺激を与えることを期待する野田市長
また、キリンビールマーケティング株式会社の岩手支社で、営業部長を務める山辺孝志からも激励の挨拶が行われた。
「岩手支社では震災直後から、岩手県の被災地に支援物資を届けて回りました。被災地を訪れたとき、その変わり果てた姿に言葉を失ったことは、今も鮮明に記憶しています。今回のプロジェクトを通じて、釜石だけでなく岩手県全体に元気を与えられるよう、復興のけん引役になってほしいと思います」
今回のプロジェクトが岩手県全体の復興のけん引役になることを願う山辺部長
そして贈呈式が終了すると、試食会の時間となった。試食会場では、「釜石六次化研究会」の第1弾の開発商品である「海まん」が披露された。
第1弾の開発商品となった「海まん」
「海まん」は日本人に馴染み深い「肉まん・あんまん」をモチーフに、具材には魚介類を使用。ネーミングも含め、今までにない、まったく新しい中華まんの商品化を目指している。「海まん」の材料として使われているのは、魚のすり身、酒かす、まんじゅうの生地など。研究会のメンバーである水産加工、酒造、製菓の各社が、得意とする素材を持ち寄ることで実現した商品だ。「海まん」の具は、「カツオ」「カツオ+ホタテ」「サンマ」の3種類が用意された。試食会の参加者からは、「魚介類を具に使うとは画期的」「全体的に味が上品」「サンマがマイルドな味がして好み」など、様々な感想が聞かれた。
試食会では3種類の具を用意
市長をはじめ、試食会の参加者には大好評だった
今のところ、「海まん」はまだ試作段階。「釜石六次化研究会」では、今後も試食会などを通じて試作品への意見を聞きながら改良を重ね、来年春に商品化することを目指している。
「釜石の郷土料理を研究している女性の皆さんと協働し、震災後に釜石に帰郷したデザイナーの方に商品パッケージのデザインをお願いするなど、商品の素材だけでなく、ソフトの部分でも地域性を取り入れ、オール釜石での商品化を目指したいと考えています」
「釜石六次化研究会」の宮崎会長は、商品化に向けた抱負を語ってくれた。
研究会には今後、醤油や味噌の製造会社などが新たに加わる予定。仲間は多いほど良いというのが、研究会の考え方だ。また、開発商品についても、レシピをすべて公開。釜石だけでなく他の地域でも同じような商品を作り、それぞれの地域ブランドに育てていけるようにしたいという。「釜石オープンキッチンプロジェクト」という名が示す通り、誰にでも門戸を開いているプロジェクトなのだ。そんなオープンなプロジェクトから食のブランド商品が生まれ、地域の復興に貢献してくれることを期待したい。
地域発の食ブランド創出のために、オール釜石で力を合わせて頑張ります!
(注)第1次産業である農林水産業が、農林水産物の生産だけにとどまらず、それを原材料とした加工食品の製造・販売や観光農園のような地域資源を生かしたサービスなど、第2次産業や第3次産業にまで踏み込むこと。
写真提供/唐丹の歴史を語る会
取材協力/有限会社パワーボール、写真撮影/和田剛