活動について
各地域での活動
活動レポート
- 地元への深い愛情が人々を「絆」で結ぶ
- 郷土料理の商品化で食文化をつなぎ地元に誇りを取り戻す
- 人々の想いが新たなブランドを創り出す
- 被災した工場が被災地を応援するという取り組み
- 鯉ブランド復興にオール郡山で取り組む
- 宮城県の食材のファンを作る試み
気仙沼鹿折加工協同組合 新事務所棟落成式レポート (3/3)
地域に根を下ろしながら日本へ世界へ
落成式が終了すると、気仙沼市内にあるホテルに場所を移し、祝賀会が行われた。
祝賀会ではまず、鹿折加工組合の川村理事長が感謝と決意を表明した。
「4年前の3月11日、私たちは大事なものをたくさん失いました。想像しない事態に、茫然と立ち尽くしたことを覚えています。しかし、組合メンバーは全員が水産加工会社の経営者として、従業員と事業を諦めることはできなかったのです。そこで志ある仲間が集まり、一致団結して再スタートを切ることにしました。今まで多くの皆さんが支えてくださったお陰で、失ったもの以上の多くのものを得ることができました。組合設立当時の思いを忘れず、頂いた支援を無駄にしないよう、困難な状況に直面しても組合メンバーが一致団結して、克服する努力を惜しまないことを誓います」
支援への感謝と今後に向けた決意を語る川村理事長
続いて、気仙沼市の菅原市長から挨拶が行われた。
「組合メンバーの皆さん、本日の落成式、本当におめでとうございます。2012年8月に組合が設立される以前から色々ありましたが、その後も多くの困難に直面しました。それでも皆さんで力を合わせ、粘り強く解決してきました。その間、多くの支援者から協力を得るだけでなく、様々な人脈も築かれました。本当にすごいことだと思います。これから新しい建物や設備を活かして、素晴らしい商品を国内外へ発信してください。鹿折加工組合が気仙沼復興のリーダーになることを期待しています」
鹿折加工組合が気仙沼復興のリーダーになることへ期待を寄せる菅原市長
また、2015年4月に、キリンビールマーケティング株式会社の宮城支社長に着任した、大島宏之からも挨拶が行われた。
「本日は歴史的なセレモニーにお招き頂き、誠に有難うございます。震災ではキリンビール仙台工場も大きな被害を受け、半年をかけて復興を果たしました。気仙沼の皆さんとは同じ被災者として、心をひとつにして復興に取り組んできたと感じています。落成式の際はプレゼンテーションルームも拝見しましたが、組合メンバーの皆さんがドリームチームのように、力をひとつに合わせて今日までたどりついたということが、ひしひしと伝わってきました。キリングループは飲料を生業にしていますが、ブランドも重要な要素のひとつです。鹿折ブランドが気仙沼だけでなく日本、そして世界へはばたいていけるよう、キリングループとしてもお手伝いを続けていきたいと思います」
鹿折加工組合へのさらなる支援へ意気込みを見せる大島・宮城支社長
大島・宮城支社長の挨拶が終了すると、乾杯の時間となった。乾杯には、キリンビールから5月に発売された限定の一番搾り「仙台づくり」が用意された。「仙台づくり」は、宮城県産ササニシキを副原料として使用している。大島・宮城支社長は、「仙台づくり」が90年以上にわたり宮城県で事業を続けているキリングループの、感謝と恩返しを込めた商品だと紹介してくれた。
乾杯のために用意された一番搾り「仙台づくり」
祝賀会の参加者も一番搾り「仙台づくり」をじっくりと味わった
乾杯のあと、鹿折加工組合で事務局長を務める後藤司さんに話を聞いてみた。
「現在、鹿折加工組合では「海とごちそう」のブランドで、試作を重ねながら新しい商品開発を続けています。商品開発やブランディングを続ける中で、改めて思うのは「キリン絆プロジェクト」による支援で培ったものの大きさです。商品作りはもちろんですが、商品を説明したり商談にこぎつけたりなど、組合メンバーのプレゼン能力は格段に高まりました。「キリン絆プロジェクト」は人材育成の面でも、大きく貢献してくれたと思います。ご支援頂いたプレゼンテーションルームでは、商品のプレゼンや商談だけでなく、地域とのつながりも大事にしていきたいと考えています。例えば、地域の皆さんに組合各社がどのように商品を作っているのか見学に来てもらったり、地元の子どもたちを招いて水産業を通じた学習会を開くことも検討しています。いつまでも地元に根付いた存在でありたいですからね」
「キリン絆プロジェクト」の支援は人材育成の面でも大きく貢献してくれたと語る後藤事務局長
人口5千人あまりの鹿折地区。この小さな地域にしっかりと根を下ろしながらも、鹿折加工組合の目は日本全国、そして世界へと向いている。しかし、大きな舞台で成功を収めるためには、消費者のニーズに合致した商品開発と耳目を集める息の長いブランディング活動が欠かせない。今回の新事務所棟とプレゼンテーションルームが、その起爆剤となることを期待したい。
取材協力/有限会社パワーボール、写真撮影/和田剛