活動について
各地域での活動
活動レポート
- 地元への深い愛情が人々を「絆」で結ぶ
- 郷土料理の商品化で食文化をつなぎ地元に誇りを取り戻す
- 人々の想いが新たなブランドを創り出す
- 被災した工場が被災地を応援するという取り組み
- 鯉ブランド復興にオール郡山で取り組む
- 宮城県の食材のファンを作る試み
女川水産業体験館「あがいんステーション」 落成記念式典レポート (3/3)
常に新しいことに挑戦して飛躍を遂げる
落成記念式典の後には、女川まちづくりパネルディスカッション&トークセッションも行われた。
会場となったのは、新しく生まれ変わった女川駅に隣接する、フューチャーセンターCamass(カマス)。仕事場を共有できるコワーキングスペースや多目的スペースなどがあり、現在、女川町だけでなく町外も含めて約60の企業や団体が利用している。女川町の住民も自由に利用することができ、町民の集いの場にもなっている場所だ。
「民間活力を活かした復興まちづくり」と題したパネルディスカッションには、小泉・復興大臣政務官や女川合同会社の代表社員を務める阿部さんに加え、キリン株式会社から林田昌也・CSV推進部長もパネラーとして登壇。司会役となるコーディネーターは、「復興応援 キリン絆プロジェクト」の協力団体である一般社団法人RCF復興支援チームの藤沢烈・代表理事が務めた。
観覧自由のパネルディスカッションには、女川町民も数多く参加した
司会を務めたRCF復興支援チームの藤沢・代表理事
林田・CSV推進部長はパネルディスカッションの中で、ハードからソフトへと支援内容を移行している「復興応援 キリン絆プロジェクト」の概要を紹介しながら、女川町のブランディングに対する特長について言及した。
「キリングループが掲げるCSV(Creating Shared Value)は、社会と新しい価値の共有を図るものです。企業として利益をあげなければならないのは当然ですが、同時に、社会課題の解決に貢献することも目指しています。女川町の素晴らしいところは、ブランディングを最優先に考えていることに加え、ブランドをどう作っていくかはっきりしていることです。『あがいんステーション』が完成し、ブランド商品も続々と登場する中で、これから問われるのは、施設にどれだけ人が集まるか、商品がどれだけ売れるかです。最初はうまくいかないこともあるかもしれませんが、目先の利益にとらわれ、長期的な視点を失ってはいけません。『女川ブランディングプロジェクト』のコンセプトをしっかりと守りつつ、長期的な思考を持ちながら、これからも頑張ってほしいです」
女川町のブランディングの素晴らしさについて語る林田・CSV推進部長
こうした林田・CSV推進部長のコメントに対し、女川合同会社の阿部・代表社員もプロジェクトにかける意気込みを語ってくれた。
「キリングループをはじめとする皆様からのご支援は、支援というより投資だと認識しています。投資であれば、リターンが必要になります。今はまだお金で返すことはできませんが、よい商品を多く作ることにより、例えば、キリングループが自社商品を営業する際に、私たちの商品も一緒に提案することで、営業戦略に役立ててもらえるようになればと考えています」
プロジェクトにかける意気込みを語る阿部・代表社員
また、小泉・復興大臣政務官からは、女川町の復興を加速させるための提案も行われた。
「被災地の商品だから買ってもらえるというのは、長期的には厳しくなります。おいしいから、魅力的だから、買ってもらえる。ぜひ女川町の商品もそういう方向にシフトしていってほしいです。女川町の水産品は、食べればおいしいとわかります。でもそれを食べていない人にどう伝えるのか。ぜひ女川町の皆さんに考えてほしいと思います。リスクを恐れていては新しいことは生まれません。これからさらに新しい試みをどれだけできるかが、復興を加速させる鍵になることでしょう」
女川町の復興を加速させるための提案をする小泉・復興大臣政務官
「あがいんステーション」での水産業体験や物販の他にも、「あがいん(AGAIN)女川」のブランド商品のネット販売(http://store.shopping.yahoo.co.jp/onagawa-again/)など、女川合同会社は常に新しいことに挑戦し続けている。その歩みを、止めてはいけないのだろう。
「震災前は、女川町の水産品を一堂に集めて販売するなんて、想像もできないことでした。震災そのものは、女川町に大きな傷を残しましたが、傷ついた人々や町のためにも、常に新しいことに挑戦して、大きな飛躍を遂げなければならないと思っています」
パネルディスカッションを終えた女川合同会社の阿部・代表社員は、これからの抱負についてそう語ってくれた。
水揚げした新鮮な水産物を即座に加工し、付加価値を付けることで発展してきた女川町。震災によりその基盤は大きく破壊されたが、業種を超え、世代を超えて、地元の若者たちが先頭に立つことで新しい未来を切り開き、「あがいん(AGAIN)女川」の名を全国に轟かせてくれることを期待したい。
(※)「あがいん」は女川地方の方言で「どうぞお召し上がりください」を意味する。また、英語の「AGAIN」には、女川町を再び笑顔あふれる町にしたいという願いが込められている。英語の「AGAIN(あげいん)」を「あがいん」と読むことで、2つの意味を掛け合わせたブランド名にした。
取材協力/有限会社パワーボール、写真撮影/和田剛