活動について
各地域での活動
活動レポート
- 地元への深い愛情が人々を「絆」で結ぶ
- 郷土料理の商品化で食文化をつなぎ地元に誇りを取り戻す
- 人々の想いが新たなブランドを創り出す
- 被災した工場が被災地を応援するという取り組み
- 鯉ブランド復興にオール郡山で取り組む
- 宮城県の食材のファンを作る試み
カキのリサイクルを支えるバケット(鉄製容器)の支援 (2/2)
カキの養殖と出荷になくてはならない道具をサポート
牡鹿半島の付け根に位置し、石巻市の中心部からも近い場所にある佐須浜。クロダイやカレイなど大型の魚が釣れることもあり、釣り愛好家に親しまれている海岸でもある。この佐須浜に、宮城漁協石巻地区支所が管轄するカキ処理場がある。
浜辺に建つカキ処理場は津波で全壊し、地盤も沈下してしまったが、県行政を通じて土地のかさ上げをしてもらい、2012年3月末に再建を果たした。牡鹿半島でもっとも早く再建されたカキ処理場として知られている。
早期の再建を果たした佐須浜のカキ処理場。建物のすぐ裏手に太平洋が広がる
しかし問題も少なくない。
再建を急いだために、カキ処理場は従来の半分程度の大きさになった。カキ養殖を行う生産者(家族)の数も、震災の被害による影響で廃業が相次ぎ、震災前の13から8に減ってしまった。種付けの量は震災前に比べ8割程度にまで回復したが、2012年は海水温の上昇で生育が遅れたため、出荷量は従来の3分の1ほどしか見込めないという。
カキ処理場の中では、8家族の人たちが手際よく、水揚げしたカキの殻をむいていた。ここでは月曜から土曜にかけて、毎日朝6時から12時まで殻むきが行われる。1日に1人が処理するカキの量は、季節によって異なるが平均10キロから20キロほど。約20名が作業をしているので、1日に最大400キロものカキを処理することになる。殻むきされたカキはきれいに洗浄された後、キリングループなどの支援により再建された石巻市のカキ共販施設に出荷され、仲買人による入札が行われる。その後、小売店や飲食店を通じて全国の消費者に届けられていく。
「復興応援 キリン絆プロジェクト」では佐須浜のカキ処理場に対し、万丈篭(ばんじょうかご)とカキ樽を支援した。
万丈篭は養殖したカキを水揚げし、カキ処理場まで運ぶ際に使われている。カキ生産者にとってなくてはならない道具だ。カキ樽はむき身にしたカキを出荷する際に入れる透明のプラスチック容器。流通の過程で異物などが混入しないよう、カキ樽は一度開封すると再使用できない仕組みになっている。
カキの運搬に欠かすことのできない万丈篭(左)とカキの出荷に活用されるカキ樽(右)
佐須浜のカキ生産者の中には、津波で養殖施設と自宅を流され、仮設住宅で暮らしている人もいる。収穫量が震災前の水準に届いていないため、収入が回復するのにもまだ時間がかかる。
「復興応援 キリン絆プロジェクト」で支援した万丈篭とカキ樽は、どちらも消耗品であり、佐須浜のカキ生産者が身銭を切って購入しなくてはならない品々だ。これらを支援することは、作業の効率性を上げるだけでなく、苦難に直面するカキ生産者たちの資金面をサポートすることにもつながる。
カキ処理場では、万丈篭とカキ樽の支援はいろいろな意味で助かっているという感謝の言葉を何度も聞くことができた。
取材協力/有限会社パワーボール、写真撮影/和田剛