活動について
各地域での活動
活動レポート
- 地元への深い愛情が人々を「絆」で結ぶ
- 郷土料理の商品化で食文化をつなぎ地元に誇りを取り戻す
- 人々の想いが新たなブランドを創り出す
- 被災した工場が被災地を応援するという取り組み
- 鯉ブランド復興にオール郡山で取り組む
- 宮城県の食材のファンを作る試み
新しい水産業を担うリーダーを育てる (3/3)
学びを生かして東北の未来を描く
キャンプ初日の最後に行われたのは、事業計画作り。千葉さんによる講義で学んだこと、ワークショップで洗い出した様々な強み、そしてディスカッションを通じて得られた気づきなどをもとに、自社や自団体の事業計画を作るというものだ。作成時間はわずか1時間だが、「東の食の会」の高橋さんからは、限られた時間で可能な限りの計画を作成してほしいという要望が出された。
事業計画作りは、「東の食の会」が用意した2枚のワークシートに沿って行われた。
1枚目のワークシートは、自社や自団体の土台を明確にするためのもの。「理念・ミッション」「売上などの定量目標」「自社の強みである提供価値」「ターゲット顧客」「主要な商品・サービス」の5項目を埋めることで完成させる。
2枚目のワークシートは、目標達成に向けた具体的な行動計画(アクションプラン)を作る内容になっている。現在から3ヵ月後、半年後、1年後、2年後、3年後をイメージしながら「定量目標」を設定し、目標達成のために必要な「生産」や「販売」のアクションプラン、そしてそのアクションプランに必要な投資額を記入していく。
参加者たちは限られた時間の中、事業や活動の将来イメージを描きながら、真剣な表情でワークシートの項目を埋めていった。
真剣な表情でワークシートを記入する参加者たち(上) 1枚目のワークシートの「理念・ミッション」の項目には、「浜に活気を」という言葉が綴られていた
事業計画の作成が終わると、各社・団体による発表が行われた。発表後には、講師を務めた千葉さん、「東の食の会」事務局代表の高橋さん、キリン株式会社の古賀から、発表内容に対して感想やアドバイスがフィードバックされることになっている。
宮城県で三陸産の海産物の卸しを行う会社に勤める参加者は、1枚目のワークシートにもとづき、自社の理念を「消費者を中心としたコミュニティ型のビジネス」と定義した。
商品の出し手である生産者や加工業者には、商品の卸し先である飲食店などのニーズを伝え、ニーズに合った商品提供に取り組んでもらう。その一方で、消費者ニーズをふまえながら飲食店と一緒に商品開発をしたり、実際に消費者を生産現場に連れて行き、生産者の思いを直接伝えるツーリズムも実施する。最終的には、生産者や加工業者には利益がきちんと行き渡り、飲食店には消費者が多数来店する。そして消費者は三陸産の洗練された海産物に満足する。そんな関わるすべての人々が幸せになれるビジネスモデルを構築するためのノウハウと人脈があることが、自社の強みだと強調した。
自社の事業計画について発表する参加者(上) 発表内容を聞く参加者の表情も真剣そのものだ(下)
この発表内容に対し、「売上を作るために必要な客数と単価の数値が欠けている」「生産者はなぜあなたの会社に商品を卸したほうがよく、飲食店はなぜあなたの会社から商品を仕入れたほうがよいのか、より具体的な説明がないとわかりにくい」「生産サイドと消費サイドの両方につながっている卸会社なのだから、その強みを最大限生かしたほうがいい」など、フィードバック側からは厳しい指摘も相次いだ。
発表者はこうした指摘に対し、ひとつひとつ丁寧に回答しながら、納得を得て行った。
すべてのプログラム終了後、参加者にキャンプの感想を聞いてみた。
宮城県塩釜市からキャンプに参加した赤間俊介さんは、塩釜や松島のエリアで、祖父の代から漁業を営んでいる。元々はコンブの養殖から始まり、その後、カキやワカメなど養殖品目を増やしてきた。現在は、体にいい海藻食材として近年、話題を集めている「天然あかもく(きばさ)」の販売に力を入れている。
「まだキャンプ初日ですが、自分たちの仕事に生かせることを数多く学べました。販売やブランディングなど、マーケティングの理論は時代に応じて変化するので、最新の理論を専門家から直接学べたことはとてもよかったです。キャンプで学んだことを生かして、ぜひ自社の売上を伸ばしていきたいと思います」
赤間さんの言葉からは、キャンプの内容に対する満足感や今後の仕事に対する意気込みがうかがえた。
キャンプの感想を語る赤間俊介さん
キャンプ終了後の参加者たちは、夜のお酒の席で互いに交流を深めた後、2日目に行われる水産業の成功事例の視察へと出かけていった。
取材協力/有限会社パワーボール、写真撮影/和田剛