活動について
各地域での活動
活動レポート
- 地元への深い愛情が人々を「絆」で結ぶ
- 郷土料理の商品化で食文化をつなぎ地元に誇りを取り戻す
- 人々の想いが新たなブランドを創り出す
- 被災した工場が被災地を応援するという取り組み
- 鯉ブランド復興にオール郡山で取り組む
- 宮城県の食材のファンを作る試み
大槌町レポート 400年以上続く伝統と技術を絶やさないために (3/3)
プロジェクトを成功させ若者にバトンを引き継ぐ
今回、キリン絆プロジェクトによる支援が決定したのは、「ど真ん中・おおつち協同組合」が実施する「ど真ん中・おおつち!ひょうたん島GO・GOプロジェクト」だ。プロジェクト名にある「ひょうたん島」とは、大槌湾に浮かぶ蓬莱島(ほうらいじま)を指す。人形劇「ひょっこりひょうたん島」のモデルになったとも言われ、町のシンボル的な存在だったが、震災の津波により破壊されてしまった。その後、岩手県によって再生され、大槌町の文化財にも指定された。今では桟橋を渡って多くの観光客が訪れる。この「ひょうたん島」をプロジェクト名に採用したことからも、芳賀さんたちの町に対する愛着が伺える。
大槌町のシンボル的存在である蓬莱島
プロジェクトの目玉は、年内に完成予定の加工商品共同開発施設。「ど真ん中・おおつち協同組合」の4社が共同で商品開発を行うほか、開発した商品の販売や新巻鮭の体験教室を開催するなど、町の観光拠点になることを目指している。
加工商品共同開発施設の完成イメージ図
「自社とは違う別の施設で、4社が共同で商品開発を行えば、新しいアイデアもたくさん出てくると思います」
芳賀さんによれば、現在、協同組合の4社は、3社が加工場を再建、1社が仮設の加工場で事業を営んでいる。商品開発にあたっては、各社がそれぞれの事業所でアイデアを考えているが、すでに会社の独自事業と協同組合の事業という二足のわらじ履いているだけあり、なかなか商品開発に時間を割くことができないようだ。しかし、新しい施設ができれば、そこに4社が集まり、議論をしながらアイデアを出し合うことも容易になる。
4社はキリングループから支援を受けたのを機に、ビールでタコを洗って刺身にしたりビールで煮込むというアイデアを実践してみた。するとヌメリが取れて、おいしいタコの刺身とビール煮が仕上がったという。新しい施設ができれば、こうしたアイデアの発想がさらに加速することだろう。
「プロジェクトを成功させることで、漁業を離れてしまった若者たちが、戻ってくるきっかけになればと思います。地元の若者でなくても、他の地域からプロジェクトを手伝いたいと来る若者がいてもいい。私たちが持っているノウハウや技術を、惜しみなく彼らに伝授することで、400年以上続く大槌町の伝統や技術のバトンを渡していきたいのです」
大槌町が復活するためには、事業やプロジェクトを若者へ引き継いでいくことが欠かせないと、芳賀さんは考えている。
協同組合のメンバーたちの中には、震災で家族や従業員を失った人もいる。それでも、大槌町の未来のために、前を向いて懸命な努力を続けているのだ。彼らのひたむきな取り組みが若者たちの心を捉え、町の未来を担う人材を数多く輩出してくれることを願わずにはいられない。
400年以上続く伝統と技術を引き継ぐために、協同組合のメンバーが力を合わせて頑張ります!
取材協力/有限会社パワーボール、写真撮影/和田剛