活動について
各地域での活動
活動レポート
- 地元への深い愛情が人々を「絆」で結ぶ
- 郷土料理の商品化で食文化をつなぎ地元に誇りを取り戻す
- 人々の想いが新たなブランドを創り出す
- 被災した工場が被災地を応援するという取り組み
- 鯉ブランド復興にオール郡山で取り組む
- 宮城県の食材のファンを作る試み
宮城県産のカキを全国へ届ける支援 (3/3)
必要とされる支援を必要な人々へ
贈呈式の終了後、宮城漁協の経済事業部で部長を務める阿部隆男氏に、被災当時の状況や今後の展望などを伺った。 「震災が発生した3月11日は、生カキの出荷シーズン終盤でした。共販所では午後4時からの入札に備えてカキの陳列を始めていましたが、そこへ津波が襲って来たのです」
阿部部長によれば、共販所にいた人たちは向かいにあった事務所ビルの屋上へ避難。津波は2階建ての事務所ビルの1階天井近くまで到達したが、屋上にいたお陰で全員無事だったという。しかし宮城県全体で見ると、宮城漁協の組合員1万400名のうち、391名の組合員が命を落とした。
また、津波に襲われた共販所の被害も甚大なものだった。
「建物は鉄骨造りなので残りはしましたが、1階に設置されていた配電盤などの電気設備はすべて壊れてしまいました。これではカキを冷蔵保管することはできません。保管してあったカキも流されてしまい、当時は途方に暮れていました」
そこで新しい共販所には、震災時の教訓を取り入れた。
「津波対応型の建物として、1階だった建物を2階建てにし、電気設備はすべて建物上部に設置しました」
また、今回の支援を機に、共販所そのものを水産業復興のために新しく生まれ変わらせた。
「新しい共販所は、鮮度保持や衛生管理を高度に行えるHACCP(ハサップ:高度衛生管理)対応型の施設です。今まで以上に、生食用カキを安心して食べていただけると思います。また、カキの搬入・搬出を行う際、以前は手押し車を使って人力で行っていましたが、フォークリフトを使える造りにしたので効率性も上がります」
阿部部長は今回の支援を受ける中で、キリングループが展開している「復興応援 キリン絆プロジェクト」の柔軟性にも驚いたという。
「通常のご支援では、金額や品目があらかじめ決まっていることが少なくありません。しかし「復興応援 キリン絆プロジェクト」の場合は、水産業の復興に必要な支援は何かを判断されながら、柔軟に対応してくださりました。共販所以外にも、フォークリフトやカキ殻粉砕機などの支援を受けましたが、これらは私たちがカキ生産者へ聞き取りをしたうえで決めた支援内容です。こうした支援の決定方法は、支援を受ける側にとってはありがたいですね」 2012年は例年に比べて夏場に雨が降らず、海水温も上昇したため、カキの生育に影響が出ている。宮城県ではカキの出荷開始を、当初予定していた9月29日から10月15日へ延期を余儀なくされた。宮城県のカキ生産者は、震災の影響に加えて自然との戦いも強いられているのだ。
そんな厳しい状況に立ち向かうカキ生産者のためにも、キリングループは宮城県で生産されたカキが全国の食卓に並ぶよう、今後も支援を続けていく。
(注1)宮城県漁業協同組合からの資料等に基づく
(注2)漁業・養殖業生産統計年報(農林水産省)より
(注3)共同通信(2012年10月15日)
(注4)宮城県漁業協同組合からの資料等に基づく
取材協力/有限会社パワーボール、写真撮影/和田剛