活動について
各地域での活動
活動レポート
- 地元への深い愛情が人々を「絆」で結ぶ
- 郷土料理の商品化で食文化をつなぎ地元に誇りを取り戻す
- 人々の想いが新たなブランドを創り出す
- 被災した工場が被災地を応援するという取り組み
- 鯉ブランド復興にオール郡山で取り組む
- 宮城県の食材のファンを作る試み
野田村レポート 村の産業全体を支える地域ブランドを目指す (2/3)
地球環境の変化に対応する養殖に挑戦
「のだ印の水産物ブランディングプロジェクト」によるホタテのブランド化の取り組みは、野田村の他の水産物へも効果が波及する可能性を秘めている。
例えば、塩蔵ワカメもそのひとつ。野田村の塩蔵ワカメは市場でもっとも高い値がつくほど、評価が高い。その背景には、ワカメを塩蔵加工する段階で、塩分や水分を最小限にまで排除できる加工技術の高さがある(注1)。
「ワカメもホタテ同様、市場関係者の間では高い評価を得ているにもかかわらず、世の中には広く知られていません。ホタテのネーミングが実現したことで、ワカメなど他の水産物にも、同様のブランド化や付加価値向上ができると考えています」
廣内さんは、プロジェクトチームのメンバーが漁業や加工販売業、行政機関のように異なる活動分野を持つことも、水産物に対する見方が多彩になり、ネーミングをはじめとするブランド化に好影響を与えるのではと考えている。
また、プロジェクトではカキの養殖にも挑戦している。野田村ではこれまでカキの養殖の経験がなく、「村の漁師はカキの殻をむくのも下手」と笑うほど、カキとは縁遠い生活を送ってきた。それでもあえてカキの養殖に挑戦したのは、プロジェクトをきっかけに新たな商品を生み出したいという思いと同時に、地球環境の変化に対する危機感もあった。
「カキはホタテと違い、高水温に強いと言われています。地球温暖化が進む中、海水温が上昇して万一ホタテの養殖が難しくなったとき、カキの養殖ができていれば、リスクの分散にもなります」
現在、野田村ではシングルシード法(注2)による外海での養殖試験を続けている。まだ収穫できる量が少ないため、飲食店などに試験出荷している状況だ。今後は養殖試験で得られる様々なデータを集め、一定の収獲量が見込める養殖手法として確立され次第、本格的な出荷を始める予定だという。
全国的にも珍しい「外海でのシングルシード法」による養殖試験を経て、本格出荷される予定の野田村のカキ
他にも、ホタテやワカメなどの水産物とのだ塩などの農産物を合わせた加工品を開発するなど、野田村の他産業の素材や商品と連動したブランディングも視野に入れている。
「のだ塩は他の地域の商品や料理にも多く使われていますが、その際、野田村産の塩であることが明記されています。今回のブランディングプロジェクトを通じて、ホタテやカキも、野田村産であることがその商品のひとつの価値になるような、ブランドにしたいと考えているのです」
廣内さんによれば、野田村の生産物がブランド化されることで、物流にも好影響が出るという。野田村は岩手県北東部の沿岸に位置するため、都市部へ生産物を出荷する際の輸送コストが高くなるのが悩みだった。今までは各事業者がそれぞれ生産物を出荷していたが、今回のプロジェクトを通じて野田村の生産物のブランド化が実現すれば、水産物や農産物を一度に集約して、「野田村産ブランド品」として発送できる可能性も高まる。そうなれば、輸送費の大きな削減に貢献できるというのだ。
「そのためにも、まずはそれぞれの生産物や商品が、地元の人々に愛されるものにならなくてはなりません。地元に愛されてこそ、本当の地域ブランドだと言えるでしょう」
地元の人々に愛され、彼らが営業マンのように、口々に野田村の生産物や商品の素晴らしさを伝えてくれる。そんな地域ブランドを目指したいと、廣内さんは考えている。