活動について
各地域での活動
活動レポート
- 地元への深い愛情が人々を「絆」で結ぶ
- 郷土料理の商品化で食文化をつなぎ地元に誇りを取り戻す
- 人々の想いが新たなブランドを創り出す
- 被災した工場が被災地を応援するという取り組み
- 鯉ブランド復興にオール郡山で取り組む
- 宮城県の食材のファンを作る試み
フィッシャーマンズ・リーグ 「SANRIKUフィッシャーマンズ・フェス」キックオフ会レポート (2/3)
多彩なプロジェクトを通じて三陸を世界ブランド化する
キックオフ会ではまず、フィッシャーマンズ・リーグの下苧坪さんから主催者挨拶が行われた。
「フィッシャーマンズ・リーグは、岩手・宮城・福島の水産業のリーダーが連携し、三陸ブランドを日本、そして世界へと推し進めることを目指しています。出身地域に関わらずメンバーが思いをひとつにして、ただ海産物を売るのではなくブランド化することで、三陸の素晴らしさを世界に伝えていきます。三陸ブランドは現在、1パーセントの認知しかないかもしれません。フィッシャーマンズ・リーグの活動を通じて、5年後・10年後には、99パーセントの人々に三陸ブランドを知ってもらえると信じています」
フィッシャーマンズ・リーグのメンバーを代表して挨拶を行う下苧坪さん
日本経済新聞、共同通信、朝日新聞、テレビ岩手、いわてめんこいテレビなど、
キックオフ会にはメディアも多数、取材に訪れていた
続いて、「東の食の会」の高橋・事務局代表から事務局挨拶が行われた。
「フィッシャーマンズ・リーグは、2012年12月に始まった『三陸フィッシャーマンズ・キャンプ』から続く活動です。キャンプでは大学の先生など専門家をお招きし、マーケティングやブランディングについて学びながら、水産業者それぞれの事業を発展させようと頑張ってきました。そして各自の事業を行いつつも、地域を超えた傘となるブランドを作ろうと立ち上げたのがフィッシャーマンズ・リーグです。三陸を世界ブランドにしようと、メンバー全員が同じ目標を持って活動していますので、どうぞよろしくお願いします」
メンバー全員が三陸を世界ブランドにするべく活動していると語る高橋・事務局代表
事務局挨拶が終了すると、フィッシャーマンズ・リーグのメンバーが紹介された。現在、コアメンバーは16人。メジャーリーガーが冬場のキャンプを経てリーグへと進む大リーグにちなんで命名されたフィッシャーマンズ・リーグでは、全員が背番号を持っている。各メンバーは、氏名・出身地・背番号・事業内容に加え、「水産業の楽しさを広めたい」「生産者の思いを消費者に伝えたい」「水産業で面白いことを起こしたい」など、今後に向けた抱負を話してくれた。
自己紹介を兼ねて、フィッシャーマンズ・リーグでの抱負を語るメンバーたち
大リーグをイメージして命名されたフィッシャーマンズ・リーグのロゴマーク
続いて、フィッシャーマンズ・リーグのリーダーの1人である阿部勝太さんから、活動内容の説明も行われた。
まずは三陸ブランドを強化し、海外へ輸出することに注力するという。ブランド化する商品は三陸で生産量の多い牡蠣とわかめに特化。三陸と聞いただけで2種類の海産物を思い浮かべてもらえるよう、PRビデオやリーフレット、ホームページなどを活用しながらプロモーション活動を続けていく予定だ。また、魚食文化が低迷する中、海産物のおいしさや魅力をもう一度、消費者に知ってもらえるよう、食育活動も積極的に行っていくという。
フィッシャーマンズ・リーグの活動内容を説明する阿部さん
フィッシャーマンズ・リーグには現在、三陸を世界ブランドにするための4つのプロジェクトが立ち上がっているが、各プロジェクトのリーダーからも活動内容が報告された。
牡蠣プロジェクトでは、リアス式海岸特有の起伏の激しい地形で個性的な漁師たちが作る、個性的な牡蠣の魅力を前面に出してPRする。すでに香港でテストマーケティングも実施していて、身の大きさや味の濃厚さなどで高い評価を得ている。
わかめプロジェクトでは、刺身のツマとして認知されるなど、わかめの品質にこだわる人が少ない中、日本の一大産地である三陸のわかめの魅力を広めていく。具体的には、あまり知られていない、わかめの部位ごとの食べ方を紹介したり、新しい加工品を開発していく。
そして牡蠣やわかめを、海外に販売するために欠かせないのが輸出プロジェクト。牡蠣やわかめの良さをただ伝えるだけでなく、三陸の文化も含めたストーリーを発信することで、「モノ」に加えて「コト」のプロモーション活動を進めていく予定だ。
また、食育プロジェクトでは、三陸の海産物のおいしい食べ方や栄養面で優れている点などを、特に若者や子どもたちに伝えることで、将来に向けた需要の発掘にも取り組んでいく。
各プロジェクトのリーダーからは映像を用いて活動内容が報告された
フィッシャーマンズ・リーグのメンバーによる活動内容の紹介が終了すると、経済産業省東北経済産業局の守本憲弘・局長から激励の言葉が贈られた。
「フィッシャーマンズ・リーグの皆さんは、震災による壊滅的な被害の中で、家族を守り、従業員を守り、地域を復活させようと頑張ってこられました。その固い意志と努力に敬意を表します。三陸の水産業者の皆さんが連携し、切磋琢磨しながら、三陸を世界に認知されるブランドにする。本日はその第一歩となるキックオフ会です。皆さんの後ろで、多くの三陸の人たちが、期待を持って見守っていることを忘れないでください。そして『SANRIKUフィッシャーマンズ・フェス』を通じて、大きな成果と経験を持ち帰ってください」
フィッシャーマンズ・リーグの活動には、三陸の人々の期待が集まっていると話す守本・局長
続いて、「復興応援 キリン絆プロジェクト」の協力団体として、日本財団の荻上健太郎・海洋グループ上席チームリーダーから挨拶が行われた。日本財団はキリングループが拠出した寄付金で基金を創設し、支援金の助成を行うことで被災地の水産業支援をサポートしている。
「フィッシャーマンズ・リーグが立ち上がるまでには、多くの苦労がありました。すべてのメンバーが被災し、自分の事業を立て直すだけでも大変な中、地域の枠を超えて三陸を世界に発信しようという試みは素晴らしいと思います。三陸には魅力的な海産物が豊富なのに、牡蠣とわかめにブランド化を絞ったのも、苦渋の決断だったことでしょう。しかし、ブランド化には取捨選択が必要です。皆さんの活躍により、三陸が世界のブランドに育つことを期待しています」
荻上・上席チームリーダーは、ブランド化する海産物の数を絞るという苦渋の決断が、
三陸を世界ブランドに導く要因になると考えている
また、キリン株式会社CSV推進本部の林田昌也・執行役員CSV推進部長からも挨拶が行われた。キリングループは日本財団の協力のもと、「復興応援 キリン絆プロジェクト」水産業支援事業として、「三陸フィッシャーマンズ・キャンプ」による人材育成プログラムに約2,300万円を助成。水産業リーダー育成プログラムであるフィッシャーマンズ・リーグについても、約3,200万円の助成を行い、ビジョンの実現に向けて協働でプログラムを推進している。
「東北では『キリン絆プロジェクト』による水産業支援を受けた、実に様々なプロジェクトが進行しています。そんな中、これほど多くの若い漁業者が集まり、新しいことに挑戦するというのは、世界初だと言えるのではないでしょうか。その試みに敬意を表します。フィッシャーマンズ・リーグではこれから新しいブランドを作っていくわけですが、ブランド化には品質である『モノ』の良さだけでも、消費者の体験を通じてそれを『コト』にしていくだけでもダメです。三陸をブランド化するには、三陸そのものを体験してもらい、『また行ってみよう』と思わせることが大事です。そのためには、水産業者や海産物だけでなく、その土地の文化や風土をはじめとする、地域のキャラクターをPRしていくことが重要になります。キリングループとしても引き続き応援していきますので、皆さんも頑張ってください」
三陸のブランド化には、土地の文化や風土をはじめとする、
地域のキャラクターも重要だと語る林田・執行役員CSV推進部長
どんな商品・サービスであれ、ブランド化は一朝一夕に実現できるものではない。フィッシャーマンズ・リーグのメンバーは、林田・執行役員CSV推進部長の言葉の意味を、深く噛みしめたに違いない。